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西本幸雄の美学

“常識を超えた常識人”、西本幸雄の美学

 

とことん自分を貫いた信念の男。“常識を超えた常識人”に「悲運」などという表現を使ってはならない。
文=大内隆雄、写真=BBM

79年10月16日、阪急とのプレーオフ第3戦[西宮]に勝利。近鉄はついに初優勝。左から平野、佐々木、柳田にかつぎ上げられる西本監督[日生球場の祝勝会で]


 芥川龍之介の長男で、名優だった芥川比呂志は、自著の『決められた以外のせりふ』で、前から見ても、後ろから見ても、小山正明投手(阪神ほか)は自分にそっくりというようなことを書いているが、筆者は、西本幸雄は、作家で仏文学者の石川淳にウリ二つだと昔から思っていた。アゴのしゃくれ具合、マユと目の感じ、まことによく似ているのである。

 恐らく西本と親しい元日刊スポーツ記者で文学通のA氏は、「よう似てまんなあ。とても他人同士とは思えません」とか何とかからかっていたに違いないのだ。このA氏に、以前、面白いことを聞いたことがある。

「西本さんは、自宅の風呂に水を入れるとき、水道の蛇口をギリギリまで絞ってタラ〜ッという感じにするんですワ。これだとメーターが上がらんからかな」。まさかメーターが上がらないということはないだろうが、やはり、西本には常人とはどこか違うところがあるのである。

 学生のころから芥川の芝居、映画をよく観ていたし、小山投手(ロッテ時代)のコントロールに見惚れ、石川淳の文章を愛読してきた筆者としては、この風呂のエピソードを知ってから西本という野球人がいっそう好きになった・・・

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