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夏の甲子園サヨナラ試合の歴史を振り返る

 

文=永山智浩 写真=BBM

2006年夏の甲子園準々決勝。9回裏4点差をつけられた智弁和歌山は4番・橋本良平の3ランを含む5点を挙げ、帝京にサヨナラ勝ちを収めた



目立つ今大会のサヨナラ試合。最多は1973年の9試合


 夏の甲子園も7日目第3試合の作新学院(栃木)で全49校が試合を行い折り返した。ここまでの25試合でサヨナラ試合は5試合と熱戦が繰り広げられている。サヨナラ試合がもっとも多かったのは1973年の9試合。作新学院の江川卓が注目された年。残念ながら2回戦で姿を消したが、1回戦の柳川商(福岡)では延長15回、2対1でサヨナラ勝ちをしている。優勝した広島商は決勝の静岡戦、2対2の同点で迎えた9回裏の一死満塁の場面で、カウント2−2からスクイズを決めサヨナラ、5度目の優勝を決めた。

 大会史上初めてのサヨナラ試合は1915年の第1回の決勝だった。京都二中(現・鳥羽)と秋田中(現・秋田)の試合は延長13回の熱戦になったが、京都二中が相手内野守備の乱れで1点をもぎ取り2対1でサヨナラ勝ちし最初の覇者となった。決勝でのサヨナラゲームは以下9試合。

1915年
○京都二中(京都)2−1秋田中(秋田)●/延長13回

1932年
○中京商(愛知)4−3松山商(愛媛)●/延長11回

1938年
○平安中(京都)2−1岐阜商(岐阜)●

1973年
○広島商(広島)3−2静岡(静岡)●

1975年
○習志野(千葉)5−4新居浜商(愛媛)●

1976年
○桜美林(西東京)4−3PL学園(大阪)●/延長11回

1977年
○東洋大姫路(兵庫)4−1東邦(愛知)●/延長10回

1978年
○PL学園(大阪)3−2高知商(高知)●/延長10回

1985年
○PL学園(大阪)4−3宇部商(山口)●/延長10回

 1975年からは4年連続でサヨナラ勝ち優勝だった。1977年の東洋大姫路は延長10回に安井浩二が、夏の決勝では唯一のサヨナラ本塁打(3ラン)を、東邦の1年生エース・坂本佳一から放っている。翌1978年のPL学園は9回表まで0対2と劣勢だったが、驚異の粘りで3点を取りサヨナラ。大逆転のVだった。1985年はPL学園の清原和博桑田真澄の最後の夏。宇部商にサヨナラ勝ちをして有終の美を飾ったが、この年以降、決勝でのサヨナラ試合はない。

 昨年までサヨナラ試合は297試合ある。高校別では(カッコ内は通算勝利数)、

1位
中京大中京(愛知)8回(76勝)

2位
銚子商(千葉)7回(25勝)

3位
龍谷大平安(京都)6回(59勝)

3位
天理(奈良)6回(45勝)

3位
報徳学園(兵庫)6回(26勝)

6位
仙台育英(宮城)5回(26勝)

6位
横浜(神奈川)5回(32勝)

6位
智弁和歌山(和歌山)5回(35勝)

6位
広島商(広島)5回(43勝)

6位
高松商(香川)5回(22勝)

 となる。最多優勝(7回)を誇る中京大中京がトップの8回だが、そのうち4回は戦前の中等野球時代。2位の銚子商は1958年に初出場し1973年まで15勝したが、そのうち7回がサヨナラ勝ち。全国制覇を果たした1974年以降はサヨナラ勝利がない。また甲子園通算20勝以上したチームでサヨナラ勝ちがないのは智弁学園(奈良=20勝)のみだ。

 サヨナラゲーム297試合のうち、「逆転」がつくのは63試合。究極の逆転劇は2006年の準々決勝の智弁和歌山対帝京(東東京)。

 帝   京 000 200 028 =12
 智弁和歌山 030 300 205x=13

 帝京が9回表に一挙8点を挙げ大逆転し4点差を付けたが、智弁和歌山もその裏5点を挙げ4点差をひっくり返し勝利した。この年は、2回戦で駒大苫小牧(南北海道)が青森山田戦で9回裏に2点を挙げ10対9でサヨナラ。3回戦では日大山形が今治西(愛媛)に2点差を逆転し11対10でサヨナラと、ハイスコアのサヨナラゲームが多かった。決勝で早稲田実(西東京)と駒大苫小牧が引き分け再試合を演じた年でもある。(記録は夏の大会のみ、2014年まで)
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