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苦しいプロ12年目のシーズン 内海哲也は完全復活なるか

 

文=斎藤寿子 写真=BBM

2013年は13勝(6敗)を挙げたが、昨年は7勝(9敗)、そして今季は8月12日に初勝利。ここまで3試合1勝1敗、防御率5.87と苦しんでいる



いつもグラウンドを出るのは最後だった新人時代


 激しい優勝争いが続くセ・リーグ。18日現在、首位阪神を、2位の巨人が2.5ゲーム差、3位の東京ヤクルトが3.5ゲーム差で追いかけている状況だ。この激戦の中、この男の真の復活が待たれている。内海哲也だ。今季はケガで出遅れ、2度の先発も白星とはならなかった内海が、12日の横浜DeNA戦でようやく今季初白星を挙げた。本人にとってもチームにとっても、決して小さくない1勝であったに違いない。だが、内容を見れば、まだ真の復活とは言い難い。

 内海といえば、思い出すことがある。以前、ジャイアンツ球場のグラウンドキーパーにインタビューした時のことだ、グラウンドキーパーは、表舞台では見えない選手の姿を目にしている。それこそ、ジャイアンツ球場のグラウンドキーパーは、一軍昇格を目指して日々、汗を流している2軍選手たちの苦しみや葛藤を目の当たりにすることも少なくない。

 そのジャイアンツ球場のグラウンドキーパーを10年以上務めている方に、一番印象の強いシーンを訊くと、「入団間もない頃の内海投手ですね」と言って、こんなエピソードを教えてくれた。

「チームの練習が終わっても、ひとり遅くまで残って、黙々と走っていたのが内海投手でした。そしてシャドウピッチングしながら、レフトとライトの間を行ったり来たりするんです。おそらく両翼のポールを軸にして、体がブレていないか、腕の位置が下がっていないかなど、細かくフォームをチェックしていたんだと思います。とにかく、いつも最後にグラウンドを後にするのは内海投手でした。一軍で活躍し始めた彼を見て、『厳しい世界で活躍する選手というのは、やっぱり陰で人一倍努力しているんだな』と思いましたね」

 内海はプロ3年目の2006年にチームトップ、自身としては初めての2ケタとなる12勝をマークし、頭角を現し始めた。翌07年には最多奪三振を獲得。この頃から先発ローテーションの柱としてチームを支え、11、12年には2年連続で最多勝を獲得。12年は最優秀投手、ベストナインにも輝き、巨人のエースとしての地位を築いた。

 しかし今季は、プロ生活12年間で最も苦しいシーズンと言っても過言ではないだろう。左前腕部の炎症で、開幕2軍スタートとなった内海は、6月に今季初先発を果たすも、両足をつるアクシデントもあり、5失点を喫し4回途中で降板。再び2軍での調整となった。

 再昇格した7月には6回まで2失点と好投するも、7回途中で左太腿裏をつって降板。またも登録抹消となってしまった。

 そして3度目の正直とばかりに、先発マウンドに上がったのは、今月12日。DeNAに対し、5回2/3を投げて4失点。決していい内容とは言えないものの、味方打線の援護によって、ようやく今季初勝利を挙げた。昨年9月26日以来となる白星に、内海はお立ち台で感極まった様子で目頭を押さえた。

 33歳のベテランは、「1勝挙げることが、これほどまでに難しいことだったのか」、そして「1勝がこれほどまでに嬉しいことなのか」と、久々の勝利の味をかみしめていたのではないだろうか。

 しかし、これで「復活の狼煙を上げた」とは言い難い。7月まで1勝にとどまりながら、8、9月で6勝をマークした昨季のような復活劇を見せられるかは、次の登板でどんなピッチングをするかだ。それだけに今日19日は内海本人にとっても、チームにとっても、今後を占う大事なゲームとなる。
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