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三振数から見るプロ野球の歴史

 

文=永山智浩 写真=BBM

青木宣親は経験を積むにつれ三振の少ない打者に変化していった



三振か本塁打か、思い切りのいい打撃スタイルが特徴の西武


 9月8日現在、100三振以上喫している打者は、セ・リーグが3人、パ・リーグが8人の計11名。パ・リーグの上位4人は、1位・中村剛也153、2位・メヒア136、3位・森友哉129、4位・浅村栄斗120と西武勢が独占している。

 西武は昨年もメヒア156、中村124、木村文紀112、浅村100、栗山巧100と5人が100三振以上だった。これは史上初のことで、2年連続4人以上というのも史上初の記録となる。また4人も05年の中日タイロン・ウッズ139、福留孝介128、谷繁元信106、アレックス103)、09年の西武(中村154、G.G.佐藤121、中島裕之113、栗山106)の2例しかない。

 三振数は多いが、中村は36本塁打でタイトル争いのトップ。他の3人も2ケタ本塁打をマーク。12球団トップの124本塁打の原動力となっており、思い切りのいい豪快なバッティングスタイルが三振数にも表れている。

 さてシーズンの三振の上位10人は以下の通り(14年まで)。

1位:ブライアント(近)
93年:204三振/127試合/三振率2.44/本塁打率11.83

2位:ブライアント(近)
90年:198三振/108試合/三振率2.08/本塁打率14.21

3位:ブライアント(近)
89年:187三振/129試合/三振率2.64/本塁打率10.08☆

4位:ブライアント(近)
92年:176三振/119試合/三振率2.55/本塁打率11.79

5位:岩村明憲(ヤ)
04年:173三振/138試合/三振率3.08/本塁打率12.11

6位:エルドレッド(広)
14年:168三振/118試合/三振率2.69/本塁打率12.27☆

7位:ゴメス(阪)
14年:166三振/143試合/三振率3.23/本塁打率20.65

8位:デストラーデ(西)
90年:165三振/130試合/三振率2.88/本塁打率11.33☆

9位:ジョーンズ(楽)
13年:164三振/143試合/三振率2.91/本塁打率18.38

10位:中村剛也(西)
08年:162三振/143試合/三振率3.23/本塁打率11.39☆

※三振率=打数÷三振 本塁打率=打数÷本塁打 ☆は本塁打王

 近鉄の大砲だったブライアントが上位4位までを独占。三振率(1三振の対する打数)も高く、90年は2.08とほぼ2打数に1回は三振していたことになる。三振のリスクはあるものの、本塁打の魅力を十分に持った選手ばかりで、上位10人中5人が本塁打王に輝き、本塁打率(1本塁打に対する打数)も高い選手が多い。

 ブライアントの204三振は不滅の記録とも言えるが、100三振以上は昨年までのべ442人いて、年代別(のべ人数)では、1950年代=7人、1960年代=22人、1970年代=13人、1980年代=39人、1990年代=111人、2000年代=179人、2010年代(5年間)=71人と、変化球の多様化(特に落ちる球)により多くなってきている。

 初めて100三振を超えたのは、54年の高橋のレッカ117、西鉄の豊田泰光107、関口清治106の3選手。セ・リーグで初めての100三振超えは57年の巨人宮本敏雄で109個。しかし三振率を見ると、そこまで多くはない。

以下、両リーグの新記録の変遷を見てみる(100三振以上。日=日本記録、セ=セ・リーグ記録、パ=パ・リーグ記録)。

レッカ(高)
54年:117三振/120試合/三振率3.67/本塁打率18.65/日パ

宮本敏雄(巨)
57年:109三振/129試合/三振率4.21/本塁打率21.86/セ

宮本敏雄(巨)
57年:109三振/129試合/三振率4.21/本塁打率21.86/セ

中田昌宏(急)
61年:121三振/138試合/三振率4.24/本塁打率17.69/日パ

ソロムコ(神)
62年:121三振/122試合/三振率3.20/本塁打率27.64/日セ

カークランド(神)
69年:133三振/130試合/三振率3.73/本塁打率19.08/日セ

ミッチェル(日)
77年:158三振/128試合/三振率3.05/本塁打率15.06/日パ

スタントン(神)
79年:136三振/121試合/三振率3.36/本塁打率19.87/セ

ブライアント(近)
89年:187三振/129試合/三振率2.64/本塁打率10.08/日パ

池山隆寛(ヤ)
89年:141三振/130試合/三振率3.43/本塁打率14.24/セ

ブライアント(近)
90年:198三振/108試合/三振率2.08/本塁打率14.21/日パ

池山隆寛(ヤ)
92年:148三振/127試合/三振率3.22/本塁打率15.90/セ

ブライアント(近)
93年:204三振/127試合/三振率2.44/本塁打率11.83/日パ

清原和博(巨)
97年:152三振/130試合/三振率3.04/本塁打率14.44/セ

岩村明憲(ヤ)
04年:173三振/138試合/三振率3.08/本塁打率12.11/セ

 豪快なスイングを売りにした選手が並ぶ。

 最後に、首位打者を獲得して100三振以上だったのは、04年の嶋重宣広島)=.337、104三振、05年の青木宣親(ヤクルト)=.344、113三振、13年のブランコ(DeNA)=.333、118三振、13年の長谷川勇也ソフトバンク)=.341、111三振の4人。青木はプロ入り2年目でまだ荒削りなところがあり3ケタ三振を喫したが、それでも首位打者を獲得。翌年は78に減らし、06年の首位打者の時には66。三振の少ない打者へと変貌していった。
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