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<TEAM STAFF CLOSE UP>芝生管理・東海林弘樹(楽天)「同じ業界の方でも驚くほど。日本のケンタッキーブルーグラスでこれほどの芝はここだけです」

 

グラウンド一面に広がる目を奪われる天然芝は、人の手と自然がともに歩んでつくってきた証。芝の状態は刻々と変化し、気候の変化に大きく影響される。本拠地がある仙台は寒冷地のため、一筋縄ではいかない。来場者を魅了する美しさは、休みなく日々芝と向き合い試行錯誤を続けてきた努力の結晶が詰まっている。
取材・文=阿部ちはる 写真=兼村竜介、BBM

芝生管理・東海林弘樹[楽天]


毎日芝生と向かい合い9年


 風が吹き抜け緑の香りがふわりと顔をくすぐる。パ・リーグで唯一、全面天然芝を採用している楽天モバイルに行くと、その美しさに目を奪われる。しかし向き合う相手は自然。その管理は非常に難しく、交代制で毎日、状態の確認を行っている。甲子園やマツダ広島で使用されている天然芝とは違う、東北の地に適した寒さに強い「ケンタッキーブルーグラス」を採用しているが、「この芝ほど難しい芝生はないんじゃないかな」と東海林弘樹さんは苦笑した。その管理を請け負っているのがワタラグリーン。宮城県仙台市にある芝生の管理会社だ。

 楽天野球団が全面天然芝にするという計画に向け始動したころから東海林さんは関わるようになった。ほぼ毎日試合を行うプロ野球でメンテナンスが可能なのか、どのような管理が必要になるのかを調査するため、二軍施設の森林どり泉で試験補助が行われ、その後楽天モバイルの室内練習場横にあるグリーンフィールドでも実施。選手たちにも感触を確認してもらいながら全面天然芝の実現に向け尽力した。しかし当時は芝生の販売をする会社に勤めていたため、張り替え後の管理は管轄外だ。「プロ野球の球場ですから失敗は許されない。実際に試験に関わった人でないと管理は難しいのではないか」。気候によっても大きく左右される芝の状態とそれによって毎日変わる管理。それを口で説明して誰かに任せることは難しいと判断し、天然芝に張り替えるタイミングでワタラグリーンに転職した。

 全面天然芝となり9年目、ようやく少し慣れてきたという。「家を出たときに病気が出ているかもと気付きます」。湿度や温度、空気などから芝の状態を察知する。その予感は大体当たるのだと笑う。

 試合日は朝6時から作業が始まり、試合後のメンテナンスもあるため管理者は1日中球場にいる。そしてシーズンオフは、サブエアーシステムと呼ばれる芝の下に敷かれている暖房器具を使用し、温風などを吹き込むことで土壌温度や水分量を調整しているが・・・

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