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立浪和義のコラム

ロッテの序盤の健闘と失速の理由

 

 パ・リーグはソフトバンクが首位を走り、それを日本ハムが4ゲーム差で追う展開になっています。

 ただ、前半戦、一番奮闘したのが、現在は3位のロッテだったと思います。もともと決してスター選手ぞろいというわけではなく、主力の今江敏晃選手が楽天、クルーズ選手が巨人に移籍してしまったこともあり、下馬評は高くありませんでした。それでも伊東勤監督の捕手出身らしい手堅い野球もあって序盤は首位を守り、その後も2位を長くキープしていました。

 今回は、まず好調時の理由ですが、一番よかったのが、リリーフ陣ですね。投手陣は先発に涌井秀章投手がいて、途中から石川歩投手が安定感を見せて台頭してきましたが、正直、手薄な印象があります。それを支えたのが、リリーフ陣、特に中継ぎでした。抑えの西野勇士投手は失敗する試合もありましたが、7回以降を投げる益田直也投手、内竜也投手、ときにロングも担う藤岡貴裕投手が非常に安定していた。先発は6、7回と思って飛ばしていけますから、非常にラクだったと思います。私にとっては中日時代のチームメートになりますが、落合英二投手コーチがよく整備しているな、と思って見ていました。

序盤戦の好調さはリリーフ陣の貢献度が高い。立て直しに向け、落合コーチ[右から2人目]の手腕にも注目だ


 打線では角中勝也選手をはじめ、鈴木大地選手、やや調子は上がっていませんでしたが、清田育宏選手のようにしぶといバッターがいるのがロッテ打線の特徴です。彼らは一発長打があるわけではありませんが、ここぞという場面で勝負強い打撃を見せる。そこにデスパイネ、ナバーロと両外国人の長打が絡んで得点するのが勝ちパターンでした。強いときはリリーフ投手が相手の攻撃の勢いを消し、その後で得点と、投打のバランスのよさを感じるチームでした。

 ただ、結局、そのカギを握っていた内投手が6月中旬に故障離脱(登録抹消は7月2日)となった。それでも交流戦では打線がカバーして勝っていたんですが、7月に入って打線が湿ると、8日からの6連敗で一気に落ちてしまいました。逆に言えば、いまの野球で、この7、8回を投げる投手の存在がいかに大きいものであるか、よく分かる失速劇でした。

 現在10ゲーム差とはいえ、まだまだ可能性がゼロというわけではありません。ソフトバンクとの直接対決にしっかり勝っていけば差は確実に縮まりますし、ソフトバンクと日本ハムの星のつぶし合いもあるでしょう。ロッテのリリーフ陣では益田投手、南昌輝投手が好調を維持しています。そこに抑えの西野投手、大谷智久投手が完全復活すれば、また前半戦のような戦いができるはずです。落合コーチの腕の見せどころですね。

 ただ、優勝がほぼなくなった4位以下のチームが、CSもありますから、まずは3位という戦いになったとき、ソフトバンクにはエース格を当てず、目先の相手にぶつけていく戦いになってくる可能性があります。結果的に下位が食い合いとなり、再浮上が厳しくなってくるかもしれませんが、そこを勝ち抜いてこそ、本物の強さと言えるでしょう。

PROFILE
たつなみ・かずよし●1969年8月19日生まれ。大阪府出身。PL学園高からドラフト1位で88年中日入団。1年目からショートのレギュラーをつかみ新人王、ゴールデングラブに。その後、95年から97年とセカンド、03年にはサードでゴールデン・グラブに輝き、96年にセカンド、04年にサードでベストナインを手にしている。09年限りで引退。通算2586試合2480安打、135盗塁、打率.285。487二塁打は日本球界最多記録でもある。
立浪和義の「超野球論」

立浪和義の「超野球論」

そのときどきで気になった選手や試合、さらに、私が感じたポイントについて書いていきたいと思います。野球をより深く知りたいという方、また、もっともっと野球がうまくなりたいという中学、高校生のみなさんにも参考になる連載になればと思っています。

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