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立浪和義のコラム

筒香嘉智選手の進化したスイング

 

7月29日には広島戦[マツダ広島]で2本塁打。勢いが止まらない


 夏場にきて、すさまじい勢いで打ちまくっているのがDeNAの主砲・筒香嘉智選手です。8月だけで16本塁打は素晴らしいですね。ヤクルト山田哲人選手が独走気味だった打撃3冠部門でもホームランで2本抜き去り、打率も3毛差で上回り、打点も3差まで迫っています(8月6日時点)。2014、15年と2年連続で打率3割台、ホームランも20本台(22、24本)をマークしている素晴らしい選手ですが、今年は、すでに34本塁打。才能が完全に覚醒しましたね。

 今回は編集部のリクエストもあって、連載の特別版として筒香選手のバッティングの進化について書いてみたいと思います。

 高卒で入団し、23歳とまだ若い選手ですが、あれだけのパワーを持ちながらも、研究熱心で現状に甘んじることなく、毎年構えやタイミングの取り方を微妙に変えています。私がいままで筒香選手のスイングを見ていて感じた欠点は、バットが少し下から出る傾向があるということでした。そのため速い球やインサイド気味の球に弱いところがあったのですが、今年はトップに入ったときから、バットが上から出る形がしっかりできています。

 最近、高めのボール気味の球をホームランにしていることがありますよね。高めのボールを飛ばすためには距離をつくる必要があります。いままでは球を追いかけるように上体が前に出てしまい、この距離がつくれず詰まることがありましたが、今年の筒香選手は頭を後ろに戻すようにして距離をつくって振っています。自分の中でボールを遠くに飛ばすためのコツを一つつかんだのだと思います。最近のホームランを見ていると、全盛期のバリー・ボンズ(現マーリンズコーチ)のようにも見えてきます。スケールの大きなバッターに成長しましたね。

 ホームランバッターはいくつかのタイプに分かれ、バットが遠回り気味でインサイドは詰まりやすいのですが、真ん中より外側の甘い球を打つことでホームラン数を増やしてる選手もいます。ただ、インサイドを投げておいたほうが長打がないというバッターはピッチャーも怖くないと思います。インサイドを攻めて、それが投げ損なって甘くなったときにホームランされるという怖さ。これを持っているのが本当のホームランバッターだと思います。その意味でも筒香選手はホームランバッターらしいホームランバッターと言えるでしょう。もちろん、山田選手も同様にインサイドをしっかりさばける素晴らしい選手です。2人の争いに注目ですね。

PROFILE
たつなみ・かずよし●1969年8月19日生まれ。大阪府出身。PL学園高からドラフト1位で88年中日入団。1年目からショートのレギュラーをつかみ新人王、ゴールデングラブに。その後、95年から97年とセカンド、03年にはサードでゴールデン・グラブに輝き、96年にセカンド、04年にサードでベストナインを手にしている。09年限りで引退。通算2586試合2480安打、135盗塁、打率.285。487二塁打は日本球界最多記録でもある。
立浪和義の「超野球論」

立浪和義の「超野球論」

そのときどきで気になった選手や試合、さらに、私が感じたポイントについて書いていきたいと思います。野球をより深く知りたいという方、また、もっともっと野球がうまくなりたいという中学、高校生のみなさんにも参考になる連載になればと思っています。

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