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勝利に導くワンプレー

134キロ剛速球 牧田和久/WBC2次ラウンド第1戦vsオランダ

 

9番手として延長10回から登板した牧田


 居並ぶメジャー・リーガーたちを力でねじ伏せた。

 2次ラウンド初戦となった3月12日のオランダ戦(東京ドーム)は、4時間46分に及ぶ大熱戦。延長11回、タイブレークの末に日本が勝利を収め、2次ラウンド突破へ、貴重な1勝を手にしている。3回終了までに互いに5点を取りあうシーソーゲームの前半戦、1点を巡る攻防となった後半戦、延長タイブレークでは中田翔の2点適時打もあるが、勝利を決定付けたのは、延長10回からマウンドに上がったクローザー・牧田和久の、完ぺきとも言えるパフォーマンスだろう。

 周到な準備と、状況を読み解く力が好投の要因。今大会を通じて9回(中国戦を除く)を託されてきた牧田だったが、この試合では1点リードの9回に指名されたのは則本昂大だった。「たぶん、(オランダは)一発のあるチームなので、三振を取れるピッチャーで、力には力で行ったほうがいいという判断だと思いました」と、この継投策を冷静に受け止めると、すぐに頭を切り替えている。「最悪を想定して、延長で行くんだろうなと思って準備をしていました」。

 結果、則本はリードを守り切れず、同点に追いつかれる。なおも続く二死二、三塁のサヨナラの危機こそ脱したものの、相手にとっては起死回生の同点劇。流れは完全にオランダに傾きつつある。こんな状況下での登板も、変則右腕は冷静だった。「点差どうこうはまったく考えていなかったです。バッターを一人ひとり抑えることだけを意識していました」。

 見慣れないアンダースロー(からの軌道)ということもあるが、外角低めいっぱいに制球されるスライダーが秀逸。外を意識すれば、胸元を突くわずか134キロ(この日の最速)のストレートが、数字以上の威力を発揮し、現役メジャー・リーガーをそろえたオランダ打線を牛耳っていく。

2回を無失点で試合を締め貴重な1勝をもたらした


「結構、差し込まれていたので自信になりました。(オランダは)打撃練習から強い打球を打っていましたが、自分特有の下から浮き上がる真っすぐを胸元に投げればホームランはないかなと思っていました」

 同点の10回は八番から始まる打線を3者凡退。無死一、二塁から始まる延長11回タイブレークでは、昨季レンジャーズで90試合に出場したプロファーを、初球の高めストレートでファーストフライ。続く昨季21本塁打のボガーツ(レッドソックス)には、フルカウントから132キロの内角ストレートでバットをヘシ折るサードゴロ。最後はサムズをキャッチャーファウルフライに打ち取って試合を締めた。

 打者6人、1人の走者も許さない完ぺきな投球に「イメージどおりでした」と牧田。素直に9回に送り出しておけば、この展開はあり得なかっただろう。あらためて国際大会での場数の差と、心臓の強さを感じさせる2イニングであった。

文=坂本匠 写真=小山真司
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