初戦の宇部鴻城戦は1安打に終わったが、抜群の存在感だった根尾
来年、2018年はセンバツが90回、夏の選手権は3ケタの大台、100回大会を迎える。選手権90回大会を制したのが大阪桐蔭。2012年には
藤浪晋太郎(現
阪神)を擁して史上7校目の春夏連覇。平成以降で春1回、夏4回優勝と、同校は平成時代の「黄金期」を築いていると言っていい。
この選手権100回大会を照準に合わせ、全国の強豪校は16年から強化を進めているという。つまりは「3年計画」。18年の主役となる注目2年生が今大会、期待どおりの活躍を見せている。報徳学園・
小園海斗が多治見との1回戦で本塁打を放てば、早実・
野村大樹も明徳義塾との1回戦で2安打をマーク。鮮烈な甲子園デビューを飾った2人に刺激を受けたという、大阪桐蔭にも来年のスーパースター有力候補がいる。
根尾昂。岐阜・飛騨高山ボーイズ時代から最速146キロを計測していた“スーパー中学生”であり、高校入学前からテレビでも取り上げられていた逸材だ。選手層の厚い大阪桐蔭でも1年夏から出場機会に恵まれた。昨秋は近畿大会4強。外野手、遊撃手、投手としても存在感を発揮し、自身初の甲子園へと乗り込んできた。
試合前の取材でも風格十分だった。まず、背筋がピンと伸びた姿勢の良さが印象的。177センチ76キロとバランスの取れた体格だ。そして、落ち着いた発言にもスター性を感じる。打撃の持ち味を聞かれ、こう答えた。
「フルスイングするところ。打ってから次の塁を狙う姿勢。走塁まですべてを含めて打席だと思います」
背番号7ながら、大会前には“三刀流”として話題を集めた。宇部鴻城との1回戦(3月25日)では、根尾は「五番・遊撃」で先発出場。注目の初戦で、怪物は躍動した。甲子園初打席となった1回裏に右前適時打。その後の凡打(左飛)でも決して、ランニングのスピードを弱めない。あっという間に二塁まで到達し、ベンチまでも猛ダッシュと、見ていて気持ち良い。
守りでも軽快なフィールディングで魅了。1球1球に対して準備が早く、一歩目への意識が強く感じられた。「声の連係、相手にプレッシャーがかかる全力疾走を徹底しています」。8回からは中堅に入り、評判どおりの万能ぶりを披露。この日の登板機会はなかったが、投手としてのセールスポイントはこうだ。
「押していくところ。打者を『圧』で押し切ることがテーマ。守備にリズムを与えていきたい」
三刀流――。2回戦以降も、根尾のパフォーマンスから目が離せない。
文=岡本朋祐 写真=BBM