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鈴木誠也を始め若鯉育てる母の味―広島カープ大野寮・料理長の思い―

 

4月28日のイベントのゲスト・横山竜士氏と廣瀬純氏も久しぶりの大野寮メシに舌鼓を打った



 アスリートにとって大切な『食』――。特に成長著しい伸び盛りの若手選手にとっては、食べる“もの”、食べる“量”の管理は欠かせない。広島東洋カープにおいて若手選手の食生活を30年以上にわたり支えてきた人がいる。おもに二軍・三軍の若手選手が暮らす「カープ大野寮」の料理長・宮本悦夫氏だ。

 4月28日に開催された広島東洋カープのファン倶楽部限定イベント『大野メシツアーin横浜』では、横浜港をクルージングしながら、宮本料理長が腕を振るった、選手が普段食べている大野寮のお昼ごはんが振る舞われた。肉ばかりでなく野菜が多めに使われ、おいしくてバランスの取れた食事。そこには宮本料理長の細やかな気配りが詰まっている。

「食べる相手は毎日一緒。飽きられないように工夫しています」と宮本料理長。常にアンテナを張り、自らが外食した際においしいと思ったものは積極的に取り入れ、レパートリーを増やしていく。

 さらに、最近の選手は好き嫌いだけでなく、食材のアレルギーなども多く、「(食材に関する個々の事情は)リストを作り、できる限り対応しています」。中には体質によって食材を制限したり、食事量を調整する選手もいるという。

 例えば、昨年飛躍し、今や四番に座る鈴木誠也は、宮本料理長が記憶する中でよく食べる選手の一人だ。鈴木は夏場に体重を落とさないため、1日4、5食を食べるよう心掛けていた。そんな選手のため、寮には常時食べられるものがバランスを考え常備してある。

 また、2017年にドラフト1位で入団し、先発ローテーションの一角を担う加藤拓也に関してもこんなエピソードがある。加藤は太りやすい体質で、慶大時代の夜は炭水化物を取らず、とり肉をメーンとしていたという。入団の際にそのことを小耳に挟んだ宮本料理長は、さっそく加藤本人に確認し、すぐさま食事に反映した。

 大切な選手の食生活を任されているがゆえ、食事に関する情報は聞き逃さない。

 宮本料理長は「もうね、母親ですよ、母親。男ですけど、母性が出てきちゃいました」と冗談を飛ばしたが、選手1人ひとりに気を配り、毎日愛情のこもった料理を提供し、選手の活躍を願う。その姿は、選手にとってまさしく第2の母と言えよう。

「選手が食事をおいしいと言ってくれたり、マエケン(前田健太)がアメリカに行く前にあいさつに来てくれたり、木村拓也(元広島ほか、故人)がアテネオリンピックの銅メダルを見せに来てくれたこととか。そういうたわいもないことがすごくうれしいんです」と満面の笑みを見せた宮本料理長の顔は、息子の活躍を喜ぶ母親の顔のようだった。

※4月28日に振る舞われた大野寮メシの詳細は、5月10日発売予定の週刊ベースボール5月22日号に掲載予定です。

文=菅原梨恵 写真=窪田 亮
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