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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

恩師が語るDeNA・筒香嘉智の真価

 

着実に本来の姿を取り戻しつつある筒香


 謝らなければいけないことがある。『週刊ベースボール』本誌4月24日号にて「筒香嘉智の覚醒前夜」にスポットをあてた記事を掲載した。その中でDeNA二軍打撃コーチとして筒香を指導した大村巌・現ロッテ二軍打撃コーチの証言を掲載したのだが、その中で大村コーチの言葉を取り違えてしまった。

「(当時)筒香は自分をプルヒッターだと言っていた――」

 筒香自身は、こんなことは言っていなかった。筆者が大村コーチから話を聞く中で、文脈を勘違いしてしまった。しかし、筒香という打者を語るにあたって、ここは重要なポイントだった。

「私が本格的に筒香の指導を始めた2013年オフ、彼は期待の選手であるがゆえに、周囲からのアドバイスが多過ぎた。しかも真面目な性格だから、それをすべて受け入れてしまい、その結果、すごく混乱していたんです」(大村コーチ)

 筒香自身も、大村コーチも、筒香の持ち味は「広角に打てること」だと思っていた。しかし、周囲からのアドバイスは筒香を「プルヒッター」だと決めつけてのものが多かった。そのギャップが、当時の筒香の混乱を招いていた。

「まずはしっかり反対方向に打つようにしよう、打点を稼げるようにしよう、と。やるべきことのポイントを絞って、彼の頭の中を整理しました。ただ、当時から筒香は今につながる土台をすでに備えていた。私は信念を持って一つのことを突き詰める手伝いをしただけです」(大村コーチ)

 事実、筒香は14年、15年と本塁打は20本台ながら、打率を3割に乗せ、着実に打点を稼ぎ、バッティングをスケールアップさせていく。大村コーチは15年限りでDeNAを離れることになったが、「左方向へ本塁打を打てるようになれば、いつでも引っ張って本塁打は打てる」という大村コーチの言葉どおり、昨年の大ブレークへとつながっていった。

「筒香は常に自分のスイング軸の中で勝負ができる。泳がされないし、差し込まれない。自分の間合いの中で自分から打っていけるし、待つこともできるから、タイミングが崩れない。時間調整がうまいんです。自分のスイングのエリアの中で勝負ができる。だから世界基準でも勝負ができると思います。160キロの動くボールであっても、筒香なら自分のスイングエリアの中で対応できると思いますよ」

 大村コーチはそう言葉を続けた。いまだ進化の過程にある“ハマの大砲”。確かに今季は少し出遅れたようにも見えるが、気付けば打率は3割に近づき、しっかりと打点を重ねている。本塁打も5月13日時点でトップとは5本差。シーズンが終わったときには、すべての部門でタイトルをかっさらっていたとしても、何の不思議もない。

文=杉浦多夢 写真=太田裕史
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