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楽天・梨田昌孝監督が“就任2年目”で好成績を残す理由

 

熟練のタクトで楽天を率いる梨田監督(左。右は菅原秀


 優勝請負人――。その言葉がぴったりと当てはまる指揮官といえるだろう。開幕から首位を快走する楽天を率いる梨田昌孝監督。今年で就任2年目になるが、2001年には近鉄、09年には日本ハムを2年目で頂点に導いている。梨田監督本人も「2度あることは3度ある」とその気になっているが、いまの戦いを続ければ可能性は十分にあるだろう。

 1年目にチーム状況を把握して、2年目に生かす。いずれも、このパターンがはまっているように思う。特に近鉄時代、それが顕著だった。00年、近鉄1年目には機動力野球を前面に押し出すが失敗。チームは2年連続最下位に沈んでしまった。「この戦い方は合わない」と実感するや、翌年は方向転換した。開幕から21試合連続盗塁ゼロの記録を作るなど足技に頼らない攻撃を徹底。すると、選手はどのような状況でも腰を据えてスイングするようになり、チーム本塁打数も211本をマークするなど打ち勝つ野球でシーズンを乗り切った。

 さらに、前年はナインが試合をあきらめるのが早いとも感じていた。ベンチに覇気もなかったので、球団へトレードを要請。その選手が阪神北川博敏だった。二軍監督時代に常にハツラツとしていた北川を目にしていたのだ。シーズン当初、北川は打撃で結果が出ずに二軍落ちが頭にちらつていたが、梨田監督は「打てなくても気にしないでいい。ベンチで元気良く声を出すことを優先してくれ」と直接電話で伝えたという。思惑どおり北川はベンチでチームを盛り上げてくれた。そして、9月26日のオリックス戦(大阪ドーム)で代打逆転サヨナラ満塁優勝決定本塁打と球史に残る大仕事をやってのけたのだ。

 開幕1週間前に捕手の礒部公一を外野へコンバートしたことも奏功。礒部は140試合にフル出場し、打率.320、17本塁打、95打点をマーク。中村紀洋の後を打つ五番として、存在感を大いに発揮した。

 とにかく、打つ手が次々にはまった。今年も開幕投手を務める予定だった岸孝之がインフルエンザにかかって、開幕直前に回避するなど危機に見舞われたが冷静に対処。代わりに先発した美馬学が6回3失点と試合を作って勝利をものにした。美馬はその後、5月17日までに4勝を挙げるなど安定した投球を見せている。

 長いシーズン、荒波にもまれることもあるだろう。しかし、梨田監督の熟練のタクトで、楽天は最後までいい戦いをするに違いない。

文=小林光男 写真=井田新輔
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