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ヤンキース・田中将大、不調の要因は打者の意識変化によるもの!?

 

打者が強く振ってフライを打つ傾向に変化しつつある影響で田中がホームランを打たれやすくなっている!?


 ヤンキースの田中将大が12試合に先発した時点で、すでに17本のホームランを打たれ、被打率.298、防御率6.55と苦しんでいる。

 筆者は普段、ダルビッシュ有(レンジャーズ)や前田健太(ドジャース)を担当しており、田中は取材していない。ただ彼ほど優秀な投手が、なぜこうも打たれるのか、当然気になる。気がつくのは、田中の「本塁打数/フライ数」の数値が23.3%と、昨年の12%から倍近くになっていることだ。フライが上がったら4本に1本はホームランである。

 この数値、MLB全体では3番目に悪い。1位はロッキーズのタイラー・アンダーソンで24.1%、2位は同じくロッキーズのタイラー・チャットウッドで23.8%、3位田中、4位は同じくヤンキースのマイケル・ピネダで22%である。

 いつも取材するレンジャーズに、ジョイ・ギャロという選手がいる。打率.204だが、17本のホームランを打ち、ア・リーグ2位だ。と同時に三振数も82個でリーグワースト2位。彼は言う「何回バットに当たるかが大事ではない。当たったときに何をするかだ」。MLBのスタットキャストで最近話題になっているデータに平均打球発射角度(AVERAGE LAUNCH ANGLE)がある。彼は26.2度で野手で2番目に高い。1位はパドレスのライアン・シンフだ。14本塁打(ナ・リーグ8位タイ)、打率.161、67三振(リーグワースト4位)である。

 一般的に25度から35度の間の角度で打球が飛び、発射速度が95マイルを超えていればホームランになるという。彼らはゴロを打たない。三振してもいいから、アッパーカットのスイングで打ち上げられるボールを待ち、一発で仕留めるのである。

 今、メジャーではこういったアプローチが見直されている。というのはデータに基づく守備シフトの精度が年々高まり、ゴロは当たりが良くてもアウトになるからだ。ブルージェイズのジョシュ・ドナルドソンは「ゴロとはアウトになること。仮にヒットになってもそれはたまたま」とまで言い切る。そして平均的な野手だったナショナルズのダニエル・マーフィが、ゴロではなくフライを打つようにスイングを改良し、スーパースターに進化したことも、球界に衝撃を与えた。

 15年、メッツで打率.281、14本塁打、56打点だったのが、16年、ナショナルズで.347、25本塁打、104打点。平均打球発射角度は11.1度から16.6度に上がっている。

 ちなみにダルビッシュもすでに12本のホームランを打たれ、「本塁打数/フライ数」の数値は15.2%と上がっている。ダルビッシュは最近のメジャーの打者のアプローチについて「ボールも飛んでいますから、チームの主軸というか、ある程度ホームランを打てるパワーのある人は、フライアウトならOKくらいの感じで打ってきているとは思います」と話していた。

 田中の調子が悪いだけでない。メジャーの打者のアプローチの急速な変化+ヤンキー・スタジアムが特にホームランが出やすい球場であることが影響しているように思うのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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