初ホームランの後、取材申し込みが殺到した
プロ野球の歴史の中で、日付にこだわって「その日に何があったのか」紹介していく。今回は7月8日だ。
漫画ではあるが、日本プロ野球への功績はあまりに大きい。水島新司氏の漫画『ドカベン』である。小太りの捕手・山田太郎を主人公に、悪球打ちの岩鬼正美、秘打の殿馬一人、小さな
巨人・里中智ら明訓高の個性豊かな選手たちにひかれ、野球を始めた少年たちも多かった。
そのドカベンが本当に現れた! と騒がれたことがある。浪商高の
香川伸行である。甲子園でホームランを量産した巨漢捕手。バッテリーを組んだのは、のち
中日に進む
牛島和彦だ。決して力任せではなく、巧みなバットコントロールを誇った天才肌のバッターでもあった。
1980年南海(現
ソフトバンク)にドラフト2位で入団。連日、マスコミの大取材攻勢となったが、のち香川は「初めは取材されるためにグラウンドに来ているようだった。しかも質問が全部。体重は? から入る」と苦笑いしている。
開幕は二軍スタートだったが、7月に一軍に上がり、初打席が7月8日の近鉄戦(日生)だった。ここで
井本隆から場外ホームラン。高卒新人の初打席ホームランは20年ぶり史上3人目の快挙だった。香川はこの年、50試合の出場ながら打率.282。83年には規定打席未満ながら打率.313をマークしたが、体重増も災いし、最後まで未完の大器で終わった。
写真=BBM