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名門校をけん引する“癒し系”スラッガー横浜高・増田珠

 

1年から名門の主軸を張っている増田


 7月18日は横浜高のドラフト候補・増田珠(3年)の父・照久さんの誕生日だった。増田はこの日の神奈川大会3回戦(対秀英高)で、長崎で待つ“単身”の父へ、バースデー白星をプレゼントした。

 一塁スタンドでは増田の母・美穂さんが黄色いメガホンを片手に大声援を送っていた。

「(対外試合が解禁となった)3月から(試合を)見逃さないようにしているんです。理解のある旦那で良かった(苦笑)。誕生日のお祝い? 試合前にひっそりと連絡しておきました」

 増田は長崎県出身。高校卒業後のプロ入りを目指すため、神奈川の名門・横浜高の門をたたいた。迎えた最終学年。母は居ても立ってもいられず、夏の大会が終わるまで、生活拠点を神奈川県内に置き、愛息の試合を追っている。

「最後の夏は『甲子園で終わりたい』と言っていた。夢を叶えさせてあげたい」(美穂さん)

 横浜高・平田徹監督は、増田の人柄を「愛されキャラ。スター性という意味では、引きの強いほうかもしれません」と語る。取材対応も丁ねいで、いつもユーモアあふれる話題を提供してくれる。

 今夏は1、2年生が多いチーム編成で、この日の先発投手も1年生。「困ったら、(自分が守る)センターを見てくれ! と言っています。マウンドから遠い? オーバーアクションで暴れます(笑)」。何ともユニークである。

 両親の教育の賜物だ。美穂さんは明かす。

「一人っ子なんですが、いつも優しくしてもらっている。反抗期もなかった。母の日、誕生日もいつも気を使ってくれる。ただ、父親は褒めたことがないです。いつか褒めてくれると良いんですが……」

 増田は多忙な仕事の合間を縫って父が観戦する試合で、あまり結果が残せていないという。「良いところを見せてやろう! と力が入るんですかね」と美穂さん。

 この日、増田は中堅前の安打で、外野手が処理をもたつく間に二塁へ到達した。つまり、センター前ツーベースで、持ち味の足を披露。また、四番として2つの四球で一塁へ歩いた。「監督からも『良いバッターは四球が多い』と言われており、2つを選べたのは良かった」とフォア・ザ・チームを貫いている。

 試合後に誕生日の話題を振ると「今日だったんですか?」と驚きの表情。決して忘れていたわけではない。「2〜3日前に母と話して、今日は試合に入っていた」と目の前の一戦に集中していたのである。

「最後に褒めてもらえるよう頑張りたい。甲子園、U−18(カナダで開催されるワールドカップ)、プロへ行けば、褒めてくれますかね?」と茶目っ気たっぷりに語った増田。昨夏に続く2年連続の甲子園へ、“癒し系”が名門校をけん引する。
文=岡本朋祐 写真=榎本郁也
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