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花咲徳栄高14年前のエース・福本真史が、コーチとして支える選手の“心”

 

2003年のセンバツで、延長15回引き分け再試合の熱戦を演じた花咲徳栄高・福本真史(左)。現在、母校でコーチを務めている


 7月27日、埼玉大会の決勝で浦和学院高を破り、夏3連覇を遂げた花咲徳栄高。閉会式を終えると、熱戦の疲れを残さぬよう、ナインはクールダウンを行うために左翼の芝生へ。その様子を14年前の同校のエースで現コーチの福本真史が優しい眼差しで見届けていた。

 2003年センバツ準々決勝。東洋大姫路高(兵庫)のエース左腕・アンと投げ合い、延長15回2対2で引き分け。翌日の再試合も延長にもつれ込み、サヨナラ暴投で敗れた“熱戦”を演じた右腕として多くの高校野球ファンの記憶に残る福本が、母校のコーチに就任したのは2010年1月。今年で指導者8年目を迎えるも、まだまだ勉強中と話しながら大事にしていることがある。

「技術的な部分で教えられることは少ないですから、気持ちの面でサポートしていければと思っているんです」

 今年3月下旬、大商大堺高との練習試合。最速149キロを誇るプロ注目投手・清水達也が打ち込まれた。昨夏の甲子園のマウンドを踏んだ経験豊富な右腕も、最後の夏を前に伸び悩む。“技術”は高校生離れしていても“心”は弱冠18歳の高校生。だからこそ、“心のケア”は忘れない。大阪から埼玉へ帰るバスの車中で右腕の心境に耳を傾けた。

「当然、思うこと、悩むことがあると思うんです。選手が何を考えているのかを知ることは大事ですから。ただ、何を話したかは私からは言えません。清水に聞いてください(笑)」と内容を自ら明かさないあたりが選手への思いやりを物語る。

 苦悩を見てきたからこそ、背番号1の快投に目を細めた。夏3連覇をかけた浦和学院との決勝戦で、清水は7回から2番手としてマウンドに上がると、直球で内角を突きつつ、カーブ交える緩急自在の投球で3者連続三振に。登板前の6回裏に先発・綱脇慧が2ランを浴び、反攻の気配が漂う中で、ゲームの流れを渡さぬ快投で頂点に導いた。

「決勝の大舞台でも堂々と投げていましたね。メンタル面で大きく成長したなあ、と。頼もしい限りです」

 14年前の2003年。春夏連続の甲子園出場を目指した自身の夏は、準々決勝で浦和学院高に3対6で敗戦。今チームも昨秋、今春の県決勝で同高に敗れているだけに「浦学に勝って(甲子園)というのは、うれしいですね」と、3年連続の夏切符と同時に、宿敵を倒しての3連覇に笑顔を見せる。その視線の先には、選手たちが歓喜に沸いていた。

 普段の練習では打撃投手も務め、岩井隆監督の下、指導者として経験を積む中で、選手たちとの信頼関係を大事に築き上げている福本コーチ。冒頭のクールダウンを終えると、選手とスマホでツーショットの記念撮影を行い、満面の笑みで応じるナインたち。選手との距離感と信頼関係は、熱戦後の一幕からも感じ取れた。

文=鶴田成秀 写真=BBM
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