マウンドで球審に「あそこだ」と説明する吉井(中央)
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわって「その日に何があったのか」紹介していく。今回は8月5日だ。
野村克也監督の下、
ヤクルトが優勝を飾った1997年の話である。ヤクルトは野村監督就任後、92、93、95年に続き、4度目の優勝。
広沢克己(すでに
巨人に移籍)、
池山隆寛、
古田敦也らを軸にしながらも、他チームでくすぶっていた選手が印象的な活躍を見せ、いわゆる「野村再生工場」と言われた。
97年もまた、
広島から引退勧告を受け、自由契約で移籍してきた
小早川毅彦がいきなり開幕の巨人戦(東京ドーム)で3連発。投手陣ではいずれも95年加入で、ダイエーでは実績を残すことができなかった
田畑一也が15勝、近鉄で首脳陣との確執があった
吉井理人が13勝を挙げ、先発陣の柱となった。
事件は8月5日の巨人戦で起こった。先発は吉井。舞台は巨人主催ながら、吉井の古巣・近鉄の本拠地・大阪ドームだった(現・京セラドーム。ただ、この年の開場なので、近鉄時代の吉井の登板はない)。
3回裏無死、マウンドの吉井の右目に赤い光線が直撃した。
「(捕手の)古田のサインが見えにくいなと思って顔を上げたら光線が目に入った。それからは右目に影ができたみたいで集中力に欠けてしまった」(吉井)
すぐ吉井は球審を呼び、「やめさせてくれ」と抗議。犯人は試合開始直後からヤクルトの選手を狙ってチカチカやっていたという。すぐさま警備員が、吉井が指差した方向で犯人捜しをしたが、結局、特定はできなかった。吉井はこの回2点を取られ降板し、試合も敗れた。
試合後、野村監督は「いろいろな味方が巨人はおる。巨人に勝つのは大変や」と、ぼやいたが、調査してみると、それ以前に甲子園の
阪神戦で巨人選手が被害を受けたことも分かったから、同一人物であれば、巨人ファンというわけはあるまい。
その後、しばらく各地の球場で警備強化が行われた。なんとも人騒がせな事件であった。
写真=BBM