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勝利の襷をつなぐリリーバー 日本ハム宮西尚生の密かな夢とは…?

 

プロ10年目で節目の250ホールドを達成した宮西


入団以来9年連続の50試合以上登板、最優秀中継ぎのタイトル、球団史上最多登板……残してきた実績に対して、過小評価されすぎている左腕だと思う。

 日本ハム宮西尚生、32歳。プロ10年間で先発登板はゼロ。すべて中継ぎとしてマウンドに立ち続け、8月3日のロッテ戦(ZOZOマリン)では節目の通算250ホールドも達成した。これはプロ野球史上2人目、パ・リーグでは初の快挙であった。北海道移転後の日本ハムの躍進を陰で献身的に支え続けてきた1人だ。

 過去に週刊ベースボールのインタビューや企画にも何度か登場してもらっているが、その中でいまでも忘れられない言葉がある。

「中継ぎ(リリーバー)は目立ってはいけない仕事。スポットライトとかは、ほかの人が当たればいい。それこそ僕たちが目立つのは、逆転や勝ち越しを許したときだけで」

 自虐的にそう語るこの言葉、なかなか言えるものではない。

 市尼崎高から関学大を経て、2008年にドラフト3位で日本ハムに入団。あこがれのプロ野球選手になった。もちろん宮西も最初は先発を志してプロの世界に入ったが、チーム事情もあって中継ぎとしての野球人生がスタートした。もちろんすぐには100パーセント受け入れられず、最初の2年間は胸の中に先発への未練もあったという。

 それでもチームに必要とされ、勝利の襷をつなぐリリーバーとして今日まで生き抜いてきた。その日々は私たちが想像している以上に過酷だ。先発投手と違って毎試合展開によって何度も肩を作り、いざマウンドに上がれば「抑えて当たり前」というポジション。いつも光が当たるのは先発投手であり、打ったバッターであり、抑えの選手たち。それでもチームの勝ちに大きく貢献し、その積み重ねがついに「250ホールド」という大きな数字にたどりついた。記録を達成した日には「何度も失敗したことも多くある中で、250回もここまで信用して起用してくれた監督とコーチ、そして支えてくれた選手、スタッフの皆さんにありがとうと言いたい」と自身の喜びより、周囲への感謝の言葉をつむいだ宮西。そんな男の次なる目標とは──。

「中継ぎを目指してプロに入る人がおってもいいよね。そういう選手が出てきてくれたらうれしい」

 高度に分業化が進む現代野球の中で、欠かせない存在になったリリーバー。そこで10年にわたって第一線で生き抜いてきた男の言葉だからこそ、胸に響くものがあった。

 今度は前人未到の300ホールドへ。そのときぐらいは本人は嫌がると思うが、宮西尚生に誰よりも、光り輝くまぶしいスポットライトが照らされてほしいと密かに願っている。

文=松井進作 写真=井田新輔
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