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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

甲子園の始球式で長島三奈さんが感じたこと

 

8月8日の開幕試合で始球式を務めた長島三奈さん


 支えてくれた人への感謝。チームメートとの絆――。敗退後に球児たちは、異口同音に2つの思いを口にする。そのために勝利を。チームの指揮を執る監督は、まず“普段どおり”をポイントに挙げることが大半だが、平常心を保つのは容易ではない。

 今夏、それを体感した1人の女性がいる。始球式を務めたスポーツ記者の長島三奈さんだ。マウンドに上がると四方に深々と頭を下げて感謝を表すと、豪快なワインドアップからボールを投じた。だが、ボールはやや逸れてワンバウンド。大役を終えて記者団の前に現れると、肩で息をして汗もびっしょり。緊張の2文字が一目で伝わってきた。

「いつも、選手たちに『楽しんで』と声をかけていたのですが、いざ自分が(グラウンドに)立つと心臓がバクバクして。普段どおりプレーする選手たちのすごさを改めて感じました」

 始球式の知らせを聞いたのは6月上旬。父・長島茂雄氏に伝えると「三奈ちゃん最高じゃな〜い」と激励を受け、東北にいる知人の監督の下へ2日間の練習も行った。日々、シャドーピッチングも繰り返し、緊張をほぐすために開会式前日には甲子園球場の外周を一周したという。「こんなの練習したうちに入らない」と話しながらも、1つの悔いが残った。

「ボールが逸れてしまって。あと50センチこっち(本塁ベース側)に。キャッチーの子にムダな体力を使わせてしまって申し訳ないです」と球児を思いやる気持ちが口を突いた。

 大会2日目に初戦(対日大山形)を6対3で突破し、甲子園通算49勝目を挙げた明徳義塾・馬淵史郎監督は、こんなことを話している。「(甲子園は)球場の雰囲気もあるし、試合の流れもある。なかなか実力は出ない」。1つのストライク、堅実なゴロ捕球、きっちり決める犠打など、何気ないプレーの1つひとつに球児たちの“強い精神力”は隠れる。だから、長島三奈さんは、改めて思った。

「私は球児たちのことを宇宙で一番尊敬しています!」

文=鶴田成秀 写真=太田裕史
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