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2017甲子園リポート

広島・鈴木誠也からの魂を受け継ぐ四番

 

二松学舎大付の四番・永井は、5打数5安打と明桜との初戦突破に貢献


 二松学舎大付の四番、しかも右打者。永井敦士(3年)に聞かなければいけないことがあった。同校先輩で広島の四番・鈴木誠也についてである。

「プロという高いレベルの中、チームが苦しい場面で盛り上がる一打を打つ。さすがだな、と思います」

 永井は1年時から主砲を任されてきた。この3年間正直、良いことばかりではなかった。そこで、1982年春のセンバツ準優勝左腕である市原勝人監督からメンタル部分の指導を受けた。

「人間なので、チャンスだと、ホームランが打ちたいとなるわけですが、いかに平常心で打席に立てるか。『結果』という高い目標を設定するのではなく、簡単なところから入っていく。例えば、真っすぐか変化球、絞った球種を初球から振るとか……」

 今夏の東東京大会はチーム打率.435と猛打を誇った。永井も.333をマークしたとはいえ、レギュラー9人で最下位。二松学舎大付の攻撃レベルがいかに高いかが分かる。そこで、最初で最後の甲子園を控え、打撃の修正を加えた。技術ではなく、ここも、心の部分である。

「ただ振っているだけだった。バットの芯に当てることを意識するため、そこに触れてから構えるようにしています。監督からはトス(ペッパー)のようにいけば、力があるから軽く飛んでいく、と。気持ち的にも吹っ切れました」

 強打だけでなく、鈴木誠也と共通している部分は「走れるスラッガー」ということ。178センチ91キロと堂々とした体格ながら、足が動く。出塁すれば、50メートル走5秒8の俊足で、次のベースを積極的に狙っていくのが持ち味だ。

 迎えた明桜との初戦(2回戦)は、その成果を出した。5打数5安打1打点。第1打席で当たり損ねの遊ゴロも、俊足を生かして内野安打。このヒットで気持ちが楽になり、中前打、遊撃内野安打、右中間二塁打、四球、左前打と打ち分け、全打席で出塁した。鈴木先輩の言葉を借りれば、神っていた。主砲自ら実践した“つなぎの姿勢”で、チーム全体としても19安打14得点と自慢の強打を爆発させた(二松学舎大付が14対2で勝利)。

 今や情報全盛の時代である。相手校の執拗なマークに対しても対応できたのは、先輩から継承された魂があるからだ。

「データを取られて、打てなくなる人はいくらでもいる。でも、鈴木さんはどんなときも結果を出し続ける。尊敬しています」

 先輩・鈴木は千葉県柏市内の同校グラウンドに、年に何度か姿を見せるという。永井は話をしたことはないが「オーラがあります。タテ、ヨコに大きい」と思わず、目を奪われた。パワーとスピードを兼ね備えた永井。NPBスカウトも甲子園のネット裏で、そのプレーぶりに目を細めていた。3回戦以降も二松学舎大付打線を四番としてけん引していく。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
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