初戦敗退した大瀬良だったが、140キロ台の直球は高い評価を得た
2009年8月12日、大会3日目の1回戦第4試合。のちにプロで大成する2人の好投手が、聖地のマウンドで激突した。1人は花巻東高の
菊池雄星(現
西武)、そしてもう1人は長崎日大高の
大瀬良大地(現
広島)だった。
「僕らの世代の“怪物”といえばやっぱり雄星。実際に打席にも立ちましたが、めちゃくちゃ速かったです」。8年後の今、大瀬良は当時をこう振り返る。
チームは菊池から3本塁打を放ったものの、大瀬良自身は3度の打席で一塁ゴロ、二塁ゴロ、一塁犠打と無安打。投げても7回途中でいったん外野に回るなど打ち込まれ、計6失点を喫した。2時間24分の試合は5対8で敗戦。初戦で涙をのむこととなった。
「点をやってはいけないという気持ちが力みにつながってしまった」。敗戦後、大瀬良は唇をかんだ。5回までは3安打3奪三振、無失点の好投。大会の主役と目されていた超高校級左腕を相手に堂々のピッチングを披露していただけに悔しさがつのった。
菊池はその秋のドラフトで6球団競合の末に西武に入団。一方の大瀬良はプロ志望届を提出せずに九州共立大に進学。4年後に広島から1位指名を受け、プロの世界に飛び込んだ。
両者が再び同じ舞台に立ってから4年が経過した。しかしこれまでプロでの対戦はなく、大瀬良は「まだ投げ合えていないんですよね」と残念そうな顔を浮かべる。
あの夏の借りを返すのは交流戦か、球宴か、はたまた日本シリーズか。今度こそ“怪物”退治を果たすつもりだ。
写真=BBM