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【夏の甲子園プレーバック】22奪三振の新記録を作った松井裕樹

 

敗戦後、人目をはばからずに号泣した松井。達成感よりも悔しさが残った2年の夏だった


 2012年夏、初めて聖地に足を踏み入れた2年生サウスポーが、強烈な光を放った。1回戦の今治西高(愛媛)で、過去5人いた1試合19奪三振を更新する驚異の22奪三振。10連続奪三振と合わせて、2つの大会新記録を樹立したのだ。

 174センチ74キロという決して大きくない体から最速147キロの速球を投げ込む。それに加えて、抜群の効果を発揮したのがスライダーだった。ストレートと同じ鋭い腕振りから、右打者ならばヒザ元に食い込む「消える」魔球。打者のバットが面白いように空を切った。

 中学時代に所属し、全国制覇を達成した青葉緑東シニア時代はカーブが武器だったが、「1種類の変化球では上には行けない」。飽くなき向上心を持ち、試行錯誤の末に伝家の宝刀となるスライダーを習得している。

 2回戦の常総学院高(茨城)戦では19奪三振、3回戦の浦添商高(沖縄)では12奪三振。激戦区・神奈川を勝ち抜いてきた桐光学園高にとって長年の壁であった「3回戦の壁」を突破した。そして準々決勝で迎えた相手は田村龍弘(現ロッテ)、北條史也(現阪神)のいる光星学院高(青森)。この試合では15三振を奪い、史上7人目の毎回&全員奪三振もマークしたが、0対3の惜敗に終わった。

「3年生ともっと長く野球をやりたかった」。試合後に号泣し、3年生捕手・宇川一光らに支えられて甲子園を去っていった。「甲子園の長い歴史で自分の名前が残るのは、プレッシャーにも感じます。でも、記録に恥じないようにレベルを上げたい」。この大会で奪った68奪三振は板東英二(徳島商高、元中日)、斉藤佑樹(早実、現日本ハム)に次ぐ歴代3位の記録となった。頂点には到達しなかったが、16歳の左腕が聖地に強烈なインパクトを残した夏となった。

写真=BBM
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