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花咲徳栄・千丸主将 監督の教えをすべて出し切り頂点へ!埼玉勢初優勝を誓う

 

花咲徳栄の主将・千丸。初の決勝進出にも浮かれる様子はなかった


 とても「勝者」には見えなかった。

 8月22日、花咲徳栄は延長11回の末、東海大菅生を9対6で下して初の決勝進出。埼玉勢としても土肥義弘(元西武)を擁した1993年の春日部共栄以来、24年ぶりのファイナリストである。春のセンバツは2度(大宮工、浦和学院)の優勝経験がある埼玉勢だが、夏は2度の準優勝(熊谷、春日部共栄)が最高成績だ。

 広陵との決勝が決まり、花咲徳栄・千丸剛主将(3年)に、その歴史的な偉業について質問すると、表情一つ変えずにこう答えた。

「初優勝とか、何年ぶりとか興味はありません。応援していただいている方に喜んでもらうためにも、プレーで恩返しするしかない。岩井先生(隆、監督)を日本一の監督にする。それだけです」

 この試合、初回に先制を許した後、自らの失策で追加点を奪われたことが、どうも納得がいかないようだった。

「自分のミスがなければ9回で終わっていた。個人として、スキを作った。1点の重みを常に意識してプレーしてきたが、この期に及んでまた、知ることとなった」

 試合はシーソーゲーム。花咲徳栄は4対4の8回に2点を勝ち越して9回裏の守りを迎えたが、6対6に追いつかれた。しかし、2年春夏に続き今回が3度目の甲子園となる千丸は、冷静だった。

「いつも最悪のことを考えている。あの場面はサヨナラ負け。だけど、同点で終わった時点で、菅生は延長で戦う力がないと思いました。なぜか?(2番手投手に)代打を出したからです」

 キャプテンの言葉のとおり、花咲徳栄は11回表に東海大菅生の3番手投手を攻め立て、勝ち越し(9対6)に成功した。

 ただ、これが強さの裏付けだろう。「勝って兜の緒を締めよ」ではないが、チームリーダー・千丸にこの日、笑顔は一つもなかった。

 思わず、聞いた。

「勝っても、慎重ですね?」

「そんなの、当たり前です……」

 悔しさを露わにした千丸。それ以上、話を聞くことはできなかった。

 すべては結果で示す。23日の決勝戦、千丸は「自分の野球のすべて」と語る、岩井監督から3年間、指導を受けたもの、全部を出し切る。

文=岡本朋祐 写真=太田裕史
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