9月13日の
オリックス戦(ヤフオクドーム)では敗れたものの、
楽天の敗戦を受けてペナント奪還へ向け、マジックナンバーを3へと減らしたソフトバンク。同日の当コラムでは今季のソフトバンク投手陣について、
池田親興氏と
斉藤和巳氏の両ホークスOBが
サファテの名前を挙げて「投のMVP」としたが、攻撃陣については同じくホークスOBの
柴原洋氏が3割30本塁打100打点に迫る
柳田悠岐を「打のMVP」としつつも、キューバの主砲の存在についても絶賛する。
まず、今季ここまでのソフトバンク攻撃陣についてデータで振り返ってみよう。打率3割超は柳田の1人だけ。これに続く規定打席到達者は13日時点で.268の
今宮健太、次いで.267の
中村晃と柴原氏も「よくこれで勝ってきたな」と苦笑いの状況。チーム打率.259、同総得点570点も2位・
西武を下回る数値で、同本塁打147本こそリーグトップであるものの、他球団と僅差で空中戦を制して勝利を重ねたわけでもなかった。
ではなぜ2年ぶりの頂点に迫れているのか。柴原氏は「クリーンアップ固定によるチームの役割分担の徹底」をポイントに挙げ、これを可能にした「五番・デスパイネ」を勝因とする。
「起点は柳田ですが、彼を中心に
内川聖一がケガで離脱する以前は、三番・柳田、四番・内川、五番・デスパイネのクリーンアップが機能していました。内川離脱後は柳田を四番に据え、三番に置いた中村まででチャンスメークする形にしました。どちらの場合もクリーンアップは点を取る。それ以外は出塁する、つなぐ、という役割分担ができていましたが、特に後者では柳田が勝負を避けられたところで必ずと言っていいほど、デスパイネが働きました。アベレージは低くてもいいんです。ココというときに打点を稼いでくれれば。そういう打者が欲しかったんです」
実はソフトバンクが2014、15年にリーグを連覇したとき、五番を任されていたのが
李大浩(現韓国・
ロッテ)だった。ところが昨季、かねてからの夢だったというメジャー挑戦を表明し、退団。その16年は
長谷川勇也など複数人が五番を打ったが、2年で166打点の韓国の主砲の穴を埋めるには至らず、得点力が落ち、結果、リーグVを逃していた。
昨季までの3シーズンはロッテでプレーし、日本の野球に順応済みだった点もポイント。V逸の教訓をムダにせず、打点を稼げるキューバの主砲獲得がファインプレーだったと言える。
文=坂本 匠 写真=石井愛子