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170センチの小さな左腕エース東克樹(立命大)/清宮“以外の”有力ドラフト候補

 

18日の関学大戦では真っすぐとスライダーが冴えわたり13奪三振。大学最後のシーズンで狙うのは、リーグVと神宮大会だ


「プロか」「進学か」──その進路が注目されていた清宮幸太郎(早実)のプロ志望表明を受けてドラフト戦線が一気に熱を帯びてきた。10月26日のドラフト会議では、果たして何球団が高校生スラッガーを指名するのか、興味は尽きない。

 一方で各球団のスカウトたちは、清宮“以外”の候補者たちのリストアップにも余念がない。清宮と同じ高校生野手であれば、安田尚憲(内野手・履正社高)、中村奨成(捕手・広陵高)が上位候補に挙げられそうだ。

 では、投手はどうか。今年は高校生投手が不作。社会人の田嶋大樹(JR東日本)、鈴木康平(日立製作所)、鈴木博志(ヤマハ)らが有力候補としてリストアップされている。そうしたなかで、評価がうなぎ上りなのが立命大のサウスポー、東克樹だ。

 身長は170センチと決して大きくはない。しかし、その左腕は大きな可能性を感じさせてくれる。

 愛知の名門・愛工大名電高では甲子園のマウンドも経験したものの、目立った成績は残していない。才能が花開いたのが立命大に進学後だ。体幹強化トレーニングによって、球速は高校時代の135キロから152キロまでアップ、さらに制球力、ボールのキレも各段にレベルアップを果たしたのだった。関西大学野球リーグでは3年春にMVP、最優秀投手、ベストナインに選ばれ、立命大の優勝に貢献した。この春と4年春にはリーグ史上初となる2度のノーヒットノーランを達成している。今夏は大学日本代表にも選ばれて、日米大学野球とユニバーシアードの国際舞台で貴重な経験を積んだ。

 大学日本代表ではユニバーシアード前の8月、社会人の強豪JX-ENEOSとの練習試合に登板し、3回無安打3奪三振と好投。視察に訪れていた侍ジャパンの稲葉篤紀監督を「コントロールがよく、キレがある。社会人相手にあれだけのボールを投げられるとは……」とうならせた。

 9月には秋季リーグ戦が幕を開けた。東はユニバーシアード(台湾)から帰国した3日後の近大戦(3日、わかさスタジアム京都)に登板したが、疲れを感じさせない素晴らしい投球を披露する。10球団16人のスカウトが見守るなか、9回1失点13奪三振で完投勝利を飾った。

 続く18日の関学大戦(南港中央)でも、伸びのあるストレートとキレのあるスライダーで無四球完封。近大戦に続いて13三振を奪うなど大学最後のシーズンを迎え、東は絶好調のようだ。

「プロに行くと身長の低さは目立つと思いますが、息の長い選手として活躍し続けることで、小さくてもやれることを証明したい」と語る心はすでに「プロ1本」。9月14日にはプロ志望届を提出している。清宮と並んで、全国の逸材たちも10月26日の「運命の日」を待つ。

文=滝川和臣 写真=松村真行
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