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阪神・掛布二軍前監督が残したものとは?

 

9月28日、甲子園での最終戦は終始笑顔で采配を振った掛布二軍前監督(右)と今岡コーチ(左)


 プロ野球選手は個人事業主だ。10月に入れば戦力外となる選手が出てくる。一度、プロの選手から離れると、なかなかNPBには戻ってこられない世界。そんなことは百も承知だろうが、現実になると慌ててしまう。そういう元プロ選手たちを何度も取材させてもらった。

 12球団の二軍にも、野球だけに集中できる施設がある。それが当たり前になってしまえば、慣れあいの感覚が染みついてしまうのも仕方がないことだろう。そこからはい上がってくる選手というのは、一軍で活躍したいという強い気持ちのある選手のみだ。

 9月28日、阪神の二軍はウエスタン・リーグ最終戦を迎えた。この試合限りで退任する掛布雅之二軍監督の最後の雄姿を見ようと多くのファンが球場に詰めかけた。そのファンに対し、終始笑顔の掛布監督。コメントでは「少し優しい監督だったかもしれません」と語った。

 果たしてそうだろうか。何度か取材をさせてもらっている中で掛布二軍監督からは、プロ野球の厳しい競争の中で、勝ち抜く厳しさを説こうしている指導者だと感じることが多かった。高卒からのたたき上げで、猛練習を繰り返し行うことで、ミスタータイガースとまで言われる存在となった。

 猛練習を繰り返す中で、自分で考えて練習しないと向上しないと感じていた。だからこそ二軍の選手たちに「1人に強い人間になれ」と言い聞かせたのだ。プロ野球選手は個人事業主。業績が上がらなければ廃業するしかない。そうならないために自分で何をすべきか考え、自分の力でその地位を確立しないといけない。それはどの世界でも一緒だ、ということを教えていたのだ。それを放任主義とは言えないだろう。やらせる練習よりも自らやる練習のほうが己を知り、より自分に厳しくしないと成長しない。

 そのことを二軍の選手たちに訴え続けた2年間だったのではないだろうか。これからこの掛布イズムは若手たちに受け継がれていくのだろうか。今、二軍で苦しんでいる選手たちの来年の活躍を楽しみにしようと思う。

文=椎屋博幸 写真=早浪章弘
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