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【MLB】データ重視時代の中で受賞選考基準も変化!?

 

ア・リーグMVPの最有力候補と見られているアルトゥーベだが、データ指標でシモンズなども高評価されている。さて受賞のゆくえは?


 今季も公式戦残り10試合を切った。この時期、私たち記者にとっては、10月のポストシーズン取材に備えるとともに、サイ・ヤング賞やMVPなど個人賞の投票期限も迫っている。何かと慌ただしい。

 今季はア・リーグ新人王を割り当てられた。ヤンキースでリーグトップの52本塁打を放ち、すっかり人気者になった巨漢アーロン・ジャッジか、オリオールズで左翼、右翼、一塁の3つのポジションを守り、打率.293、24本塁打、78打点のトレイ・マンシニなのか。直接取材することが多い東海岸の記者と情報交換をしたり、映像を見たり、データサイトの数字とにらめっこをして、1位から3位までを選び、投票することになる。

 自分では投票しないが、結果が特に気になるのはア・リーグのMVP争いだ。本命はアストロズのホセ・アルトゥーベ二塁手。WARが7.8で1位。WARは選手の総合評価指標で、打つだけでなく、守備、走塁など、すべてが考慮される。アルトゥーベは打率.347とリーグの首位打者で、32盗塁はリーグ3位。プラス二塁手として守備の要で、15年にはゴールドグラブに選ばれている。そこに伏兵として登場するのがエンゼルスのアンドレルトン・シモンズ遊撃手だ。メジャー最高の守備の名手として知られるが、今季は打つほうも打率.279、14本塁打、67打点と悪くなかった。WARはリーグ野手では3位の6.6。投票する記者が守備力をどこまで評価するだろうか。

 インディアンスのホセ・ラミレスも伏兵。三塁、遊撃、二塁の3つのポジションを守れ、今季は三塁で88試合、二塁で70試合に出た。その上で打撃もスイッチヒッターで打率.316、29本塁打。55本の二塁打はリーグ1位である。ベンチ入りの野手の数が限られるメジャーでユーティリティー野手はとても貴重だが、プラス左打席でも右打席でもまんべんなく打てる。この価値がどう評価されるか。

 記憶に新しいのは2012年。三冠王に輝いたタイガース、ミゲル・カブレラとWARで1位のエンゼルス、マイク・トラウト。どちらがMVPにふさわしいかで侃々諤々(かんかんがくがく)の議論になったこと。結果はカブレラが受賞したが、このあたりから、打撃三部門に限らず総合的に野手の評価をしようという考えが広まった。

 その一方で、WARという指標に関しては、計算が複雑な上、本当に適切な総合評価ができているかどうかは分からないと疑問符を付ける人も少なからずいる。投手については、10年マリナーズのフェリックスヘルナンデスが13勝12敗でもサイ・ヤング賞を獲得したのは転機となった。

 あの年、レイズのデビッド・プライスが19勝6敗、ヤンキースのC・Cサバシアが21勝7敗だったが、ヘルナンデスがイニング数(249回2/3)、防御率(2.27)でズバ抜けていたからだ。投手の勝ち星は運に左右されると再認識され、28人の記者のうち21人が1位票をヘルナンデスに入れた。

 何に重きをおいて選手の価値を判断すればいいのか。守備力やユーティリティー選手としての価値をどう見るのか。記者の見識が問われている。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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