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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

オリックス・小谷野栄一が目指してきた“計算の立つ選手”

 

豊富な経験を元に自分を客観視するベテランの思考は、若手の教本ともなる


 巧みに右に流し打てば、ときには引っ張って大飛球を飛ばす。チャンスメークにポイントゲッターと、多彩な働きを見せる今季プロ15年目を迎えたオリックス小谷野栄一の打撃論は、後輩たちの助けになっている。

「小谷野さんは(体勢が)崩されることも考えていると言うんです。崩されたことを想定して、その中でどう打つか。体勢が崩れても、想定していたら、自分の中では崩れたことにはならない、って。僕はキレイに打とうとし過ぎていんたんです」

 そう話すのは駿太だ。打撃向上に悩む24歳は、ベテランの考えにヒントを得たと明かす。また、今春キャンプでは宮崎祐樹が、頻繁に小谷野と会話を交わしていた。聞けば「相手投手の持ち球に応じて、目付けを変えることを聞いていたんです。内角、高低、目付けをしておくことで、無理にボールを打ちにいかなくなる。技術というより、意識の話をしていました」という。

 選手たちに話を聞く度に、助言をもらった先輩として挙がるのが小谷野だ。中でも“配球”を読むことに長けているという声が大半だが、その意識はベテランになった今なお胸に誓う一つの“目指す選手像”が隠されている。小谷野が言う。

「配球を読むには、自分を客観的に見ることができないとダメなんです。それにボクは、大きいの(長打)を打つ選手じゃない。その中でボクを使えば『こういう結果を残す』と、ある程度の計算が立つ選手でなければいけない。プロで生き残るには、そこを磨く必要があった。そのためには自分を客観的に見て、相手が何をしてくるかを想定しながら、自分にできることを考えているんです。配球を読むのも、その中の一つ。だから『どれだけ自分を客観的に見られるかが大事』と、若い選手たちに伝えているんです」

 ベンチの“計算”は、すなわち“信頼”を意味する。アマチュア時代は、決して目立った存在ではなく、ドラフト5位で2003年に日本ハムに入団。そんな“松坂世代”の一人は、プロの舞台で“計算の立つ選手”となり、スター選手がそろう同級生の中で、今季唯一スタメン出場を続けた。

 2015年にオリックスに移籍して今季で3年目。チーム最年長として、若手の模範となる36歳の向上心は尽きない。オフを前に「いろいろ試せる時期。オフはオフで楽しくて仕方ないんですよね」と笑う顔は、来季でプロ16年目となるベテランとは思えぬ“野球少年”そのものだった。

文=鶴田成秀 写真=BBM
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