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ドラフト会議物語

【ドラフト会議物語42】衝撃の「一場事件」で大混乱。ダルビッシュは日本ハムが一本釣り【04年】

 

今年は10月26日に行われるドラフト会議。毎年、金の卵たちが、どの球団へ進むか大きな注目を集める“一大イベント”で、さまざまなドラマも生まれる。今年で53年目を迎えるドラフト会議の歴史を週刊ベースボールONLINEでは振り返っていく。

ドラフト史上最年少15歳での指名も


日本ハム1位のダルビッシュ。会見では笑顔も多かった


2004年11月17日
第40回ドラフト会議(新高輪プリンスホテル)

[1巡目選手]
横浜    那須野巧   (日大)自
      染田賢作   (同大)自
オリックス 金子千尋   (トヨタ自動車)自
広島    佐藤剛士   (秋田商高)
ロッテ   手嶌智    (新日本石油)自
      久保康友   (松下電器)自
阪神    岡崎太一   (松下電器)自
      能見篤史   (大阪ガス)自
日本ハム  ダルビッシュ有(東北高)
巨人    野間口貴彦  (シダックス)自
      三木均    (八戸大)自
ダイエー  江川智晃   (宇治山田商高)
ヤクルト  田中浩康   (早大)自
      松岡健一   (九州東海大)
中日    樋口龍美   (JR九州)自
西武    涌井秀章   (横浜高)
楽天    一場靖弘   (明大)自

 近鉄、オリックスの合併発表から始まった球界再編問題に揺れた年だ。球団上層部は別とし、各球団のスカウトは詳しい事情も説明されず、なかなか戦略を確定できなかったようだ。さらに、この混乱の中で、いわゆる“チクリ”が横行し、さらなる混乱を生む……。

 異変が始まったのが8月。ターゲットは最大の注目と言われた明大の150キロ右腕・一場靖弘だ。自由獲得枠での争奪戦の中で、まず巨人の金銭授受問題が発覚し、一場は責任を取り、野球部を退部。巨人も獲得を断念した。その後、横浜、阪神が再度アタックも、こちらにも同様の問題が発覚し、巨人・渡辺恒雄オーナーをはじめ、4球団のオーナーが辞任という前代未聞の事態となった。渡辺オーナーに関しては、再編問題でのバッシングに嫌気がさしての“緊急避難”ではないか、という噂もあった。

 のち横浜の自由枠・那須野巧の裏金も問題視されたが、言い方は悪いながら、一場のような問題は上位選手なら珍しい話ではなかった。それが再編問題をはじめ、さまざまなドタバタ騒ぎの中で、一場がスケープゴートになった面もある。長年にわたる球界の汚れを一選手にすべて背負わせたのは正しいとは言えないだろう。一場は結局、新球団・楽天に自由枠で入団している。

 とはいえ、自由枠は豊作だ。出世頭はオリックスの精密機械・金子千尋、ほか内野の職人、ヤクルト・田中浩康、松坂世代最後の大物とも言われたロッテ・久保康友、さらに阪神の左腕エース・能見篤史の名前がある。

 高校生では、ダルビッシュ有が最大の注目株だったが、故障のイメージが強かったこともあるのか、日本ハムが一本釣りに成功した。もう1人が、一部に“ダルビッシュ以上”と評価されていた右腕・涌井秀章だ。西武が獲得し、のち、この2人の投げ合いはパ・リーグの華となった。

 2巡目での成功は中日の“暴れ馬”中田賢一(北九州大)、3巡目では西武が盗塁王・片岡易之(東京ガス)を獲得している。

 4巡目では楽天でスタメンに定着した横浜の藤田一也(近大)、巨人でも活躍した日本ハムのマイケル中村(前ブルージェイズ)、巨人は、強打のスーパーサブ・亀井義行(中大)と、きっちり仕事をした男たちがいる。

 5巡目ではロッテ・大松尚逸(東海大)、6巡目では横浜・石川雄洋(横浜高)、阪神・赤松真人(立命大)、中日・石井裕也(三菱重工横浜クラブ)、7巡目に巨人・東野峻(鉾田一高)らの名前もあるが、下位で話題となったのが横浜9巡目、東大出身の松家卓弘と阪神の8巡目・辻本賢人だ。マタデー高と所属がある辻本は、ドラフト史上最年少15歳での指名だった。故障もあって大成せず、阪神は批判もされたが、仮に成功を収めていたら、間違いなく英断と言われただろう。ドラフトの難しさをあらためて感じさせることになる指名でもあった。

 なお、この年、元西武ほかの石毛宏典氏が四国に独立リーグを誕生させた。ドラフト戦線に、また違った流れが生まれることになる。

<次回に続く>

写真=BBM
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