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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

楽天・高梨雄平 CSで奮闘した左のリリーバー

 

10月22日のソフトバンクとのCS第5戦。楽天の3番手・高梨は6回裏二死二、三塁で柳田を二ゴロに仕留めて、ピンチを脱した


 短期決戦は、救援投手にドラマが詰まっている。それこそ勝負が決まるまで毎試合、スタンバイ。パ・リーグのCSファイナルステージ。ピッチャー交代のたびに、ヤフオクドームのブルペンの映像がテレビ画面に映し出された。投手陣だけでなくコーチ、スタッフなど全員が最終調整を見届け、マウンドへ向かうリリーフ投手を激励して見送る。皆で結束して戦っている姿がひしひし伝わる、熱いシーンである。

 0対7。6回裏、二死二、三塁で次打者は柳田悠岐。楽天ベンチは動いた。今CS初登板の藤平尚真から中継ぎ左腕・高梨雄平(25歳)の新人リレーである。10月22日、日本シリーズ進出へ、ソフトバンク王手で迎えた第5戦(1勝のアドバンテージを加えソフトバンクの3勝2敗)。楽天・梨田昌孝監督は劣勢の中でもあきらめない采配を見せた。

 高梨はCSファーストステージを含めて、8試合中7試合目のリリーフ登板。口には絶対に出さずとも、疲労は明らかである。しかし、チームメートがブルペンで背中を押してくれた以上、腕を振るだけである。

 変化球2球で、柳田をニゴロに仕留めた。目の前の場面に集中する背番号53に、プロを見た。黙々と仕事をこなしたルーキーは、西武とのファーストステージを含めた今CSで計4回1/3、打者15人に対し無安打無失点と、左のリリーバーとしての役割を全うした。

 新人だが、高卒の藤平とは6歳差がある。高梨は川越東高、早大を卒業し、社会人野球・JX-ENEOSで2年プレーした後、昨年のドラフト会議で楽天から9位指名を受けている。大学の同級生で、ともにドラフト1位だった日本ハム有原航平ロッテ中村奨吾から2年遅れでのプロ入りを果たしたのだ。

 早大では3年春に東京六大学史上3人目の完全試合を達成。しかし、このリーグ戦通算11勝目が最後の白星となり、4年秋まで未勝利のまま大学生活を終えている。その後も試行錯誤を繰り返し、社会人でサイドスローに挑戦した。苦労を経て、楽天では1年目から「左殺し」としての立場を確立。10月9日の日本ハム戦(Koboパーク宮城)では“日本最終打席”とも言われる大谷翔平から見逃し三振を奪い、存在感を示した。

 1試合1試合が勝負。どんな展開であれ、高梨には結果が求められる。ソフトバンクとのCS第5戦は7点ビハインドだったが、西武とのCSファーストステージ第1戦は0対10の7回からリリーフ。中継ぎの中でも最も“苦しい立場”にあり、勝ち試合、負け試合、関係なく登板を強いられるのである。

 3番手・高梨の力投も報われず、楽天はそのまま0対7でソフトバンクに敗退した。今回のポストシーズンは10月14日から9日間で7試合の登板。高梨はすべてビジターという悪条件の中で、首脳陣から絶対的な信頼を得たと言っていい。とはいえ、プロとしてのキャリアは始まったばかり。まずはゆっくり、体のケアに時間を割いてほしい。

文=岡本朋祐 写真=湯浅芳昭
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