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【大学野球】現役は大学まで。優勝に王手の慶大で打率トップに立つ男

 

慶大の五番・清水は早大1回戦の初回に先制2点適時打を放ち、チームの「優勝王手」に貢献した


 メディアは「数字」を裏付けとして質問をぶつける。だが、グラウンドでプレーする選手は表向き、関心を持たないタイプが多い。東京六大学リーグ戦で、首位打者争いのトップ(打率.489、10月28日現在)に立っている慶大・清水翔太(4年・桐蔭学園高)は試合前、試合中は一切、自身の打撃成績(打率)をチェックしないように心掛けている。

「意識すると打てなくなる。数字は頭に入れないで、チームが勝つことに専念している」

 伝統の早慶戦。慶大の優勝の条件は「連勝」のみ。10月28日、この早大1回戦で1回表、先制の2点適時打を放ったのが五番・清水だった。慶大は右腕・関根智輝(都立城東高)と左腕・佐藤宏樹(大館鳳鳴高)の1年生リレーで2対1と逃げ切り、2014年春以来のVへ王手をかけた。

「勝つことだけにこだわっている。優勝がかかった試合、早慶戦の大舞台でも、自分のプレーに専念するだけ。リーグ戦の1試合としか、とらえていません」

 冷静である。それは、進路にも表れている。桐蔭学園高からAO入試で慶大へ進学し、2年春からリーグ戦に出場。その後も神宮の舞台に立ち続けたが、定位置奪取には至らなかった。

「3年秋を、一つのラインとしていました」

 野球は大学まで、と決心した。卒業後は金融関連の企業への就職が決まっており、この秋限りでバットを置く。

「吹っ切れたのか、かえってそれが良かったのかもしれません」と、現役最終イヤーを前に清水は打撃改造に着手。ノーステップ打法に切り替えると、バットの芯に当たる確率が高まった。もともとミート力には定評があり、初めてレギュラーを奪取した今春は打率.321、2本塁打、15打点でベストナインを初受賞。この夏場は、課題として残った「対左対策」に取り組み、開幕カードで東大・宮台康平(4年・湘南高)から2安打を放って、「これでいける!!」と、勢いに乗ったという。

 明大1回戦、立大1回戦ではともに4安打を放つなど、早大1回戦までに12試合中11試合で安打を記録。今秋はシーズン計23安打、11打点と慶大打線のキーマンとなっている。

 早大1回戦は第1打席の適時打に続き、第2打席も内野安打で出塁。第3打席を前にしてミスを犯してしまった。

「つい、目に入ってしまったんです。打率.511でした(苦笑)」

 その打席で凡退し、第4打席でもヒットは出なかった。やはり、意識してはダメなようだ。

 本人さえ希望すれば、大学卒業後、社会人野球でプレーする選択肢もあった。周囲からも「まだ、やれる!!」との声が絶えない。しかし、清水は自ら決めた道を歩む。

「今後は草野球程度? 準硬式くらいがやるかもしれないですけど……」

 無欲の清水は目の前の一戦に集中し、現役選手生活を完全燃焼する。

文=岡本朋祐 写真=川口洋邦
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