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日本シリーズ回顧録

【日本S回顧04】伸び伸び野球で猛虎打線爆発!悲願の日本一達成【1985年】

 

今年で68回目を数える日本シリーズだが、印象的な激闘は多々ある。ここでは過去の名勝負、名シーンを取り上げていこう。

選手一丸で西武に立ち向かう


日本一となり、西武球場で胴上げされた阪神・吉田監督


 1985年10月26日、所沢の夕暮れ時、日が沈み冷たい風が西武球場のマウンドを通り抜ける。その中で阪神の先発投手、池田親興は阪神ファンを熱くさせる渾身のガッツポーズで喜びを表した。

 圧倒的な打撃でセ・リーグを制した阪神。だが、西武との日本シリーズ初戦は8回のバースの3ランでしか得点を奪えなかった。それでも先発の池田が西武打線を完封。球団初の日本一に向けて幸先の良いスタートを切った。この日の夕食中、どこからか「西武ってかわいそうなチームやな」と漏れてきたと岡田彰布は後日、語っている。その岡田本人も「(西武は)苦しそうな野球。楽しくもっと伸び伸びやればいいのに」と感じながら、この決戦に臨んでいた。この岡田の言葉が示すように、阪神は伸び伸びと選手一丸で西武に向かっていく。

 第2戦も第1戦と同じく投手戦。自慢の猛虎打線が爆発しない。そんな中、先発・ゲイルが粘り強く投げ続けた。3回に石毛宏典に先制ソロを打たれるものの、4回にバースがレフトスタンドに逆転2ラン。だが7回裏、阪神は一死一、三塁のピンチ。ここで西武の打者は辻発彦。クセモノらしく一塁側にプッシュスクイズを仕掛けた。ゲイルはその打球に反応が遅れ、誰もが「抜けた」と思った瞬間、一塁のバースが猛然とダッシュ。素手でボールをつかみジャンピングスロー! 木戸克彦のミットへストライク送球で三塁走者の秋山幸二がタッチアウト。西武へ傾きかけた流れを、バースが守備で引き戻し2連勝を飾った。

 だが、この後、本拠地・甲子園に戻り、2連敗で2勝2敗のタイに戻される。さらにはこの2敗で甲子園での悲願の初日本一はなくなった。そして迎えた勝負の第5戦。この試合も初回から西武ペースで始まった。一番打者の石毛の安打と二番・金森栄治の送りバントを先発の池田が野選とし無死一、二塁を招く。ここで三番・田尾安志をゲッツーに斬って取り、何とかしのいだ。これが大きかった。その裏、今度は逆に真弓明信の内野安打から犠打、バースの四球で一死一、二塁のチャンス。ここで四番・掛布雅之がバックスクリーンへ先制3ラン。これが値千金の一発となり、一気に満員の甲子園のボルテージが上がった。この流れのまま、このシリーズ初起用となった長崎啓二にも5回に2ランが出て7点を奪い快勝。猛虎打線がよみがえった。それを呼び起こしたのはやはり主砲の一振りだった。

「打ち勝つ野球」で満願成就


日本一の祝勝会での岡田、掛布、真弓(左から)


 そして11月2日の第6戦。シリーズ前から吉田義男監督が選手に言い続けていた「われわれは打ち勝つんだ」の言葉が成就する。第1戦と同様、強い風がグラウンドに吹き抜けていた。だが初回、二死満塁から第5戦で2ランを放った長崎が逆風をものともせず、ライトスタンドへ会心の先制満塁本塁打を放った。1点を返された2回には真弓がソロ本塁打。そして9回、大トリで四番・掛布が2ランを放ち、とどめを刺した。

 ペナントレースをほうふつさせる猛虎爆発。最後は先発・ゲイルが、夕暮れ迫り夕陽が背中を照らす中、伊東勤を投手ゴロに打ち取り、ガッツポーズ。日本一に輝いた。スポーツ紙の一面には「満願! 日本一」の文字が躍った。まさしくその言葉がふさわしい満願成就、球団創設50年目での日本一だった。

 この6戦でペナントレース開幕から136試合目。吉田監督は初めて一度もマウンドに行くことなく、日本一をベンチで迎えた。それだけ会心のシーズン。最高の試合内容で頂点に輝き、指揮官は3度宙に舞った。振り返ればこの約3カ月前の8月12日、日航機墜落事故で中埜肇球団社長が帰らぬ人になった。その悲しい出来事もまた選手たちを一丸にさせた。そして個性派軍団を「楽しく伸び伸び」やらせた指揮官。負のベクトルも正に変え、日本一へと上り詰めた1年であった。

写真=BBM

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週刊ベースボール編集部

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