激しい雨の中で行われたセ・リーグCSファーストステージ
勝負事に「たら」「れば」は禁物と言われるが、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ「泥試合」がなかったら――。
今年の日本シリーズは
ソフトバンクの3連勝で幕を開けた。パ・リーグを制したソフトバンクと、セ・リーグ3位ながらCSを勝ち上がった
DeNA。DeNAは1998年の横浜ベイスターズ時代に歓喜の日本一を成し遂げて以来、19年ぶりの日本シリーズ進出が、ここにきてにわかに盛り上がっている。
DeNAがCSを突破する上でターニングポイントというべきゲームとなったのが2位・
阪神との甲子園でのファーストステージだろう。
降りしきる雨で水が溜まったグラウンドがカクテル光線に照らされテカテカと反射するという、史上まれに見るコンディションの中で試合は行われた。
谷繁元信氏は小誌連載の中で、あの一戦を振り返り、「しょうがないといえばしょうがなかったと僕は思います」と書いている。
「中止という判断もあったのではないかと言う人もいますが、天気予報では次の日もできないわけですよ。ということは、第1戦でDeNAは負けているわけですから、DeNAがファイナルステージ、日本シリーズに進める可能性は断たれていた。(中略)あくまで勝負をつけて次に向かうというのが最善の判断だったのではないでしょうか」(ベースボールマガジン12月号「谷繁元信『仮面(マスク)の告白』」)
ファーストステージに設けられた日程は、予備日を含めて土曜から火曜までの4日間。水曜日からは
広島が待ち受けるマツダスタジアムでファイナルステージを控えていた。
阪神が先勝。あと一つ勝てば突破という絶対的有利の中で迎えた日曜日の第2戦は、試合前から雨が降り続いていた。グラウンド整備にかけては日本一の定評がある阪神園芸をもってしてもお手上げというほどの雨だった。
気象予報では翌日も雨。2日連続雨天中止となると、仮に火曜日にDeNAが勝ったとしても1勝1敗、規定によって上位チームの阪神が勝ち上がることになっていた。要は、阪神にとっては恵みの雨になるはずだった。にもかかわらず、ファーストステージ第2戦は強行。最終的にDeNAに逆転を喫した。意気消沈した阪神に、中一日置いた第3戦でDeNAが引導を渡したのは周知の通りだ。
阪神は5月の広島戦で9点差を引っ繰り返す「神ゲーム」を演じており、ファイナルステージで広島と相まみえていれば、日本シリーズに出ていた可能性は十分にあった。
では、なぜ雨中のゲームは強行されたのか。
「ベンチがアホやから」と言ってユニフォームを脱いだ
江本孟紀氏(野球解説者)に「阪神とは、どんな球団なのですか」と尋ねたとき、「大阪に一つしかないし、ファンも多い。球団も儲かればいいやと思っているでしょうね」と答えた。「それは大事なことなんですよ。プロである以上、儲かることも考えないといけない」と続けた(ベースボールマガジン8月号「衝撃の球界事件簿」)。1試合数億円にも上るとされる興行収益。それは谷繁氏も否定しなかった。
今年のCSでこのような事態が生まれた理由について、「日本にも自前の球場があれば、こういうことはなかった」と谷繁氏は綴り、来年に向けての課題として「さしあたって予備日をもう一日増やせば全然違う」と、CSの過密日程改善を訴えた。
文=佐藤正行(ベースボールマガジン編集長) 写真=BBM