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内川聖一は日本シリーズの「ヒーロー」だった

 

優勝監督インタビューで工藤監督は内川を呼び寄せた


 日本シリーズはソフトバンクの2年ぶりの日本一で幕を閉じた。際立っていたのがキャプテン・内川聖一の集中力と存在感だった。

 3連勝であっという間に王手をかけた第4戦の前だった。第3戦では先制の適時二塁打を含む2安打。福岡ラウンドでは「打つボールも間違っていないと思いますし、けっこう見極めもできていると思うので」と言いながらも、2戦で1安打に止まっていただけに、目に見える結果が生まれた前夜の打撃について聞こうと横浜スタジアムに到着した内川へ近づいた。

「もう終わったことだから」。結果を出した翌日だけに、話を聞けるかと思ったが甘かった。目の前の試合に対する集中力は、生半可なものではなかった。「どちらかが4つ勝つまでは終わらないので」。試合後に繰り返していた言葉だ。4つ勝ち、日本一奪回を果たすまでは、前だけを向く。

 そのスタンスが第6戦、1点ビハインドの9回一死から生まれた劇的な同点弾につながったのかは分からない。ただ、工藤公康監督が「絶対打ってくれる、やってくれるという確信めいたものがあった」と振り返ったのも、内川の日々のスタンスと集中力を目の当りにしていたからではないか。

 指揮官は「打球が飛んだときには『さすがキャプテン』と思いながらボールを見つめていた」と続けた。四番としての、そしてキャプテンとしての内川に対する最大級の賛辞だっただろう。

 日本一を決めた直後の優勝監督インタビュー。工藤監督はその最中に「内川キャプテン!」と呼びかけた。ダグアウトから飛び出し檀上へ駆け上がると、指揮官に「最高の男です」と称えられた。

 その後の優勝会見で内川は「その試合のヒーローでもないのにあそこ(お立ち台)に呼ばれたのはすごくうれしかった」と語ったが、誰もが内川を第6戦の、そして日本シリーズのヒーローだと認めていたはずだ。工藤監督がお立ち台に呼び寄せたのも、きっと同じ思いからだったに違いない。

文=杉浦多夢 写真=毛受亮介
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