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【週ベ60周年記念企画16】『特集 打撃ベスト・テンの秘密』【1958年7月30日号】

 

2018年に創刊60周年を迎える『週刊ベースボール』。おかげ様で、すでに通算3400号を超えている。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。

『選手の秘密』に登場した近鉄・佃明忠の面白い逸話


表紙は巨人長嶋茂雄


 今回は『1958年7月30日号』。創刊第16号で定価30円。カラーページはない、いや、あった! センターグラビアの真ん中に見開き2ページ、そこには「よりそう二人の肩」のタイトルで巨人・長嶋茂雄、国鉄・金田正一の私服での2ショット。これも着色してのカラーのようだが、昨今のように、何かと特別価格になるわけでもなく、表紙に『天然色ページ増』(カラーをそう言っていた)とうたうわけでもなく、さらりと定価も変えずにやっているのが憎い(やや、自虐的でした)。

 表紙も長嶋だ。巻頭グラビアにも『不滅の背番号“16”』と巨人・川上哲治が3ページ登場した後、『3塁に突入した長嶋』と見開きで長嶋のスライディング写真が掲載されている。「長嶋を出せば売れる!」というデータが徐々に編集部に浸透してきたのではないか。時代とともに走るのも、週刊誌編集の醍醐味である。

 本文の巻頭は『打撃ベスト・テンの秘密』。各球団のバッターをデータを交えつつ紹介している。西鉄の中西太であれば、球場別、ボールカウント別のデータが2(ストライク)−0(ボール)では安打2本といった具合で掲載されている。ほか『科学的な攻撃法〜バッティングオーダー』の記事ではイニング別の得点などが表で載っている。これが『記録の手帖』へと変わっていくのだろうか。

 ほか『別当薫と天知俊一〜もたつく大毎と中日の内幕』と題し、選手から「冷たい」と嫌われてしまった大毎・別当薫監督、一方、チーム強化に本気にならない球団に失望して去る天知監督がいずれもこのシーズン限りで退任するのではないか、という記事があった。

 座談会では『独走態勢に入った巨人軍』。水原円裕(のぶやす)監督、川上哲治主将、さらにはエースの藤田元司、長嶋が出席だから豪華だ。今回はここでの引用を多めとも思ったが、『選手の秘密』に登場した近鉄・佃明忠の逸話が面白かったので、そちらにさせていただく。

 早実出身で毎日(この年は大毎)から移籍2年目の捕手だ。この年、自身初の100試合以上の出場を果たし、正捕手の座をつかみかけていた男だが、紹介されていたのは、毎日での2年目だ。20試合出場で打率.234、チームの正捕手はルイスで打率も.261とよく打っていた。

 その年のオフ、契約更改の話だ。なお、当時、銀行員の初任給が1万5000円と言われ、ルイスの月給は26万円だった。

 契約更改の席でオーナーが佃に提示した金額は書いていなかったが、おそらくは3万円程度ではないかと思う。

 これに佃は「いやです」と即答。オーナーが「君は20試合しか出ていないじゃないか」と言うと、「そこがおかしいですよ。なぜ僕を使わないんですか」と言ってきた。さらに希望額を聞くと、なんと13万円。その理由が振るっている。

「ルイスが26万で打率.261。いくら僕だって一軍で使ってもらったら半分の.130くらいは打ちますよ。だったら13万でしょ」。さらに「僕を使ってください。出れば打ちますよ」と猛アピール。実際、そばで聞いていた別当監督が気に入って、翌年から出番が増えたというから、ものは言ってみるものだ。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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