大阪桐蔭高のエース・柿木は駒大苫小牧高との2回戦で6回から救援して4回無失点に抑えた
最速147キロ右腕の面影がなかった……。まさかのアクシデント!? 試合後、報道陣は確認に急いだ。しかし、そんな心配も杞憂に終わった。
11月11日、第48回明治神宮野球大会2日目、高校の部で大阪桐蔭高は駒大苫小牧高を4対2で下した。5回2失点だった先発の左腕・
横川凱(2年)を6回から救援した背番号1の右腕エース・
柿木蓮(2年)は4回1安打無失点の好リリーフを見せた。
ストレートは130キロ台中盤から後半にかけて。力で押す本来のスタイルではなかったが、これには事情があった。
「コンディションが、良くなかったんです」
肩、ヒジらの調子が悪いのではなく、試合にピークを持っていくのが難しかったのだという。朝8時30分の試合開始時間が理由ではなく、ふだんとは大きく異なる環境にあった。
「神宮大会は、アップの入り方もイレギュラー」と、キャッチボールの段階から“違和感”があった。
「甲子園では、大会期間中も自分たちのグラウンドで練習できますが、東京に来てからは2〜3時間しか汗を流せない。(近畿圏以外から)甲子園に来ているチームは、こういう思いをしているんだな、と感じました」
大阪桐蔭高・西谷浩一監督からの言葉を思い出した。
「(移動、調整を含め)すべてが大会。どんなことでも対応しないといけない。環境は言い訳にできない。この中で力を発揮できないといけない」
柿木はマウンド上で必死に修正を繰り返した。
「圧がボールに行かなかった。コンディションが良くない分、ストライクが取れる範囲で、力を入れずに投げた」
悪いなりに抑えられたのは、大きな収穫と言える。東京で“洗礼”を浴びた柿木だったが、かけがえのない引き出しを手に入れたのも事実である。
文=岡本朋祐 写真=井田新輔