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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

若き侍たちに求められる王者としての振る舞い

 

侍ジャパントップチームを率いるのは稲葉監督。強さだけではなく、世界の野球界をけん引するリーダーとしての「振る舞い」も求められる立場にある


 日本において、野球は国民的スポーツであるが、世界的に見ればマイナーの域を脱していない。2020年の東京五輪で「野球・ソフトボール」が08年の北京大会以来の正式競技として復活したとはいえ、開催国の意向が強く反映された成果であり、今後も継続されるかは不透明。五輪競技に残すためには、今後の世界的な「普及」が、大きな課題となってくる。

 WBSCランキングにおいて日本は、男女とも1位につけている(男子は9月19日現在、女子は同22日現在)。つまり、侍ジャパンは「王者」としての「行動」と「振る舞い」が求められる。

 携帯電話が鳴った。相手は国際野球に精通した関係者であり、かなり高揚していた。今年はU-15アジア選手権、アジア野球選手権(社会人代表)、アジアチャンピオンシップ(女子代表)に携わり、微笑ましい光景に遭遇したという。「思いやり」そして「リスペクト」という名の「普及活動」を展開していたのだ。

 女子代表はパキスタンとの試合後、合同練習を行い、アップの仕方から練習方法まで惜しみなく日本の技術を伝えた。成長段階のチームだけに、吸収力が早く、短時間で見違えるほどの上達を見せたと言われる。社会人代表はスリランカと同宿で、食事会場などで交流を深めた。スリランカ選手のグラブは、軟式用と恵まれているとは言えない。大会後は多くの選手が硬式グラブなどの野球道具を、彼らに譲った。

 試合においては、国際大会で「常識」とされるマナーを順守しなければならない。アジアレベルの大会では、日本、韓国、台湾が3強を形成し、中国が追随するという構図。この4カ国・地域以下は現実的に、かなりの実力差がある。序盤でワンサイドになるのも、珍しいことではない。大量得点差でのスチールはタブーであり、記録として認められないばかりか、展開によっては「報復」を受けることもある。

 社会人代表は相手が混乱するようなバントなどの戦術は使わず、とにかく打っていく「正攻法」の攻撃に徹すれば、投手はストレートのみ、しかもストライクしか投げなかった。日ごろから変化球を練習していないチームに対して、配慮もなく変化球、またボール球を投げる行為は「非常識」。それが、あまり知られていない、世界におけるスタンダードなのである。

「王者としての振る舞い」。U-15代表もフェアプレーにこだわり、スタンドからは拍手喝采が起きた。世界舞台で求められる真のファイティングスピリットである。

 トップチームは11月16日から、アジアチャンピオンシップ(東京ドーム)を戦う。相手は韓国、台湾であり、スリリングな展開が期待される。稲葉ジャパンの船出。開催国として正々堂々と戦ってほしい。すべては指揮官の“指導”でチームカラーは決まる。「国際大会のマナー? 知らない」では済まされない。若き侍たちの「振る舞い」にも注目してみたい。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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