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【MLB】ドジャー・スタジアムのオルガン奏者ルールさんは前田と同期

 

昨年からドジャー・スタジアムのオルガン演奏を担当しているルールさん。今年9月半ばから前任者・へフリーさんが演奏していた「上を向いて歩こう」も復活した


 ドジャースの記者席は殿堂入りの名アナウンサーにちなみ「ビン・スカリープレスボックス」と呼ばれるが、その隣にオルガン奏者のセクションがあり、長髪の男性が座っている。

 9月半ば、ドジャー・スタジアムに「上を向いて歩こう」の調べが復活した。7代目のオルガン奏者ディーター・ルールさん、48歳が説明する。「先月、日本から来たメディア関係者の人から、1995年、野茂英雄がデビューしたとき、私の前任者ナンシー・ビー・へフリーが弾いて、大好評だったと聞いた。それで私もレパートリーに取り入れることにしたんだ」。「上を向いて歩こう」はアメリカでも「スキヤキソング」として63年に大ヒット。とはいえ前任者と違って、60年代末に生まれたルールさんにとっては「聞いたことがある」程度。

「楽譜を取り寄せてやってみた。とてもいい曲だね」。彼が弾くのは特に前田健太投手が登板のとき。タイミングは三振を取ったり、打席で活躍をしたときだ。「ケンタは私が正式にドジャースのオルガン奏者に採用された年に入ってきた選手で、2人とも2年目。いいピッチャーなのはもちろんだけど、保証が少ない契約でも受け入れてチームのために頑張ろうとか、気持ちの面も好き」とのこと。メジャーで過半数のチームがオルガン奏者を雇っているが、ドジャースには長い歴史がある。

 最初に雇ったのは42年のブルックリン時代。グレイディーズ・グディングなる人物。エベッツ・フィールドで16年間ファンを楽しませた。ロサンゼルスに移転して、コロシアム時代はいなかったが、ドジャー・スタジアムが開場になった62年に復活した。ボブ・ミッチェルさんが5年半、ドン・ビームズリーさんが5年半。72年、高校生だったドナ・パーカーさんが4カ月間勤め、ヘレン・デルさんが72年の終わりから87年まで。

「私は子どものころからのドジャースファンで、特にビル・ラッセルがお気に入りの選手だった。試合前の打撃練習のときから、グローブをしてレフトスタンドで打球が飛んで来るのを待っていた。当時のオルガン奏者は16年間勤めたデルさん。私は彼女のレコード・アルバムを買うほど好きだった」とルールさんは振り返る。前任者のへフリーさんが88年から2015年で、28年間と最長。ドジャースファンにも広く愛された女性だった。

 引き継ぐときに「考え過ぎないで。自然の流れの中で弾けばいい」とアドバイスされたと言う。前任者は4人が女性、2人が男性である。ルールさんはステイプルズ・センターで、NBAやNHLの試合でも弾いているが、この2年間、ドジャー・スタジアムで弾くのが特に楽しかったと言う。

「チームが強くて、勝っているのが大きいと思う。観客もノリがいいし、華やいだ雰囲気になる」。試合開始2時間前、観客がスタンドに入ってくるタイミングで約45分間続けて弾く。さらに試合直前の国歌斉唱の伴奏、7回のイニングストレッチでは定番の「TAKE ME OUT TO THE BALL GAME」を弾く。満員のドジャースファンがそれに合わせて大合唱するのだ。


文・写真=奥田秀樹
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