週刊ベースボールONLINE

高校野球リポート

【高校野球】春連覇に向け準備を進める“歴代最高”大阪桐蔭高の現在

 

遊撃手と投手を兼任する「二刀流」の大阪桐蔭高・根尾(左)と、攻守走3拍子そろう藤原(右)は、どん欲に木製バットで打撃練習に励んでいた


 気温10度以下の肌寒さをまったく感じさせない、木製バットの快音がグラウンドに響き渡っていた。明治神宮野球大会を終えた11月中旬以降、大阪桐蔭高は金属バットを握っていない。12月23日から30日まで、台湾で開催される親善試合へ向けた調整を行っていたからだ。大阪のほか、千葉、岐阜、和歌山からも選抜チームが派遣されるが、大阪は20人のうち、大阪桐蔭高から18選手が参加する。

 高校通算20本塁打で、投げても最速148キロを誇る根尾昂(2年)は言う。

「なかなかうまくいかないですが、大切な時間になるのは間違いない。西谷先生から言われましたが、この時期に木製バットと国際試合、2つのテーマを掲げられるのは大きな財産。どうにかものにできるようにしていきたい」

 卒業後のプロ入りを目指す二刀流・根尾にとっては、この上ない経験となるのは間違いない。

 根尾以外にも、2018年の大阪桐蔭高にはプロ注目の有力新3年生がそろう。今年9月のU-18W杯(カナダ)に2年生ながら選出された藤原恭大中堅手は50メートル5秒7の俊足に強肩の外野守備、そして高校通算21本塁打のパンチ力も秘める。

 5年ぶりの優勝を遂げた今春のセンバツで打率.571、1本塁打、8打点と大活躍した山田健太二塁手、今秋の新チーム結成以降、主将として攻守でけん引する中川卓也三塁手と、旧チームからのレギュラーが存在感を発揮してきた。

 投手も昨夏の甲子園を経験している148キロ右腕・柿木蓮と、190センチの大型左腕・横川凱に加え、遊撃手・根尾もスタンバイする厚い選手層を誇る。今秋は大阪大会、近畿大会を制し、神宮大会は4強進出。大阪桐蔭高は過去に春のセンバツ2度、夏の選手権4度優勝の名門校で、多くの好選手をプロへ輩出してきたが、来年の新3年生は「歴代最強」「銀河系軍団」と、周囲からの評価は高まるばかりだ。

 しかし、当事者とは、大きな温度差があった。4年連続でのセンバツ出場(選考委員会は来年1月26日)は確実。甲子園でプレーする以上は春連覇を狙っていくが、現場には危機感が漂っていた。西谷浩一監督は橋本翔太郎コーチが打つシートノックを捕球姿勢から捕球、そして一塁送球まで1球1球、目を凝らして確認。強打が伝統の大阪桐蔭高だが、実は守りにこだわりを持っている。一つのスキも許さない、厳しい姿勢がそこにはあった。

「20年近く(監督を)やってきましたが、(実力は)半分くらいのチーム。投手がいるわけでもないですし、打者がいるわけでもない。日本一? そんなことをどうこう言えるところまでいっていません。いま、頑張って練習しています。ネット社会の弊害……なのか(苦笑)、世の中的にはそう作られているようですが、力が足りない。惑わされないようにしていきたいです」(西谷監督)

 2018年、春のセンバツは90回、夏の選手権は100回の記念大会。大阪桐蔭高は2008年夏、90回大会を制しており、節目の大会は例年以上にモチベーションが上がる。常に謙虚な西谷監督ではあるが、さすがに鼻息が荒い。

「欲深いので毎年、毎年、勝ちたいと思ってやっていますが、90、100という数字を聞くと、出場して挑戦したい気持ちも出てくる。過去を見ても、歴史に残る大会になっています。中心的な存在になれるように、本当の力をつけていきたいです」

 充実の台湾遠征を経て2018年、大阪桐蔭高は球春へ向けた準備を着々と進めていく。

文=岡本朋祐 写真=石井愛子
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング