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【高校野球】鍛治舍巧氏の「高校野球革命第2章」に期待

 

秀岳館高(熊本)の監督として16年春から4季連続で甲子園出場へ導いた鍛治舍巧氏。2018年からは母校・県岐阜商高を率いる


 鍛治舍巧氏に期待するもの、それは、来夏の第100回全国高校野球選手権記念大会での1936年以来の全国制覇である。鍛治舍氏は2018年から母校・県岐阜商高を率いることが明らかとなった。2014年4月から今夏まで秀岳館高(熊本)を率い、2016年春から4季連続で甲子園出場。16年春から17年春まで3季連続準決勝進出と、その手腕は確かだ。

 練習は打撃重視で、豊富なトレーニング、そして食事にも気を使い、パワーをつける。試合では2ストライクに追い込まれてからは、ノーステップ打法による粘り強い打撃。一方、レベルの高い複数投手制を押し出して、高校野球に一つの革命をもたらせたと言っていい。

 ところが、秀岳館高は県外選手が中心メンバーであり、地元・熊本から決して多くの支持を集める存在ではなかった。高校野球の指導者に転じるまで、鍛治舍氏はオール枚方ボーイズ(大阪)の監督として日本一12度。同チームのメンバーが名将を慕って秀岳館高の門をたたき、16年のチームでは九鬼隆平(現ソフトバンク)、松尾大河(現DeNA)らレギュラー9人中7人が同ボーイズの出身者だった。17年のドラフト会議で、ソフトバンクから指名を受けた田浦文丸も福岡県出身。しかし、チーム強化を主とした「第1章」では致し方なかった事情もある。鍛治舎監督は以前、こう語っていた。

「熊本に還元したい思いが強い」

 つまり、県外選手が中心であっても、自ら率いる学校の結果だけにとらわれるのではなく、熊本全体をレベルアップさせたい思いが強かったのだという。

「県内の選手が熊本工、九州学院、鎮西、文徳に流れる傾向があるのは仕方ない。徐々にこちらへ来るようになればいい」と将来像を話していた。ある熊本の伝統校の監督から話を聞くと「秀岳館に追いつけ! 追い越せ!!」のムードが、活性化となっていたと明かす。監督在任4年で「秀岳館」の名を全国区にさせただけでなく、鍛治舍監督は多くの功績を残したのだ。

 2回戦で敗退した今夏の甲子園で退任となったわけだが、高校野球への情熱が消えたわけではなかった。その後の去就に注目が集まっていたが、古豪・県岐阜商ほどやりがいのある環境はない。春28回(優勝3度)、夏28回出場(優勝1度)の伝統校であり、県民からの注目度は非常に高い。期待が大きい分、叱咤激励もたくさん届くことだろう。

 夏の甲子園における公立勢の優勝は「がばい旋風」が巻き起こった2007年の佐賀北高以来、遠ざかっている。鍛治舍氏はかつてNHK解説者として、計21年で約2000試合を観戦。そして約300試合、軽妙な語り口でマイクの前に座った。スタンドで見た経験を下に、今度はベンチでこの2年間4大会で計10勝(4敗)と、その視点が確かであることが証明された。

 多くの引き出しを持っている鍛治舍氏は、今度は公立校という新たな分野でどのようなタクトを振るのか。2018年夏は第100回記念大会。決して戦力が豊富とは言えない公立校で、すぐに結果を求めるのは酷かもしれないが節目の夏、熱狂的なファンは待ってくれないだろう。

 果たして、どんな“手”を使ってくるか。過去に春夏を通じて、岐阜勢の甲子園優勝は県岐阜商のみで、1940年春が最後。卓越した指導力は県内にとどまらず、全国の公立校に影響を与える可能性は十分だ。野球人としてのすべてを捧げる、鍛治舍氏の「高校野球革命第2章」から目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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