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プロ野球仰天伝説

【プロ野球仰天伝説06】本当は160キロを出していた剛球右腕・伊良部秀輝

 

長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。

「だったら、160キロを狙おう」


剛速球を武器に、打者をなで斬った伊良部


 球速では多くの選手に抜かれてしまったが、あのときの伊良部秀輝ロッテ)が一番速かったと断言する関係者はいまも少なくないし、映像を見ても、そう感じる。

 1993年5月3日、西武戦(西武)だった。清原和博に投じた1球が、当時最速の158キロを記録。清原はこれをファウルにし、続く157キロもファウル。5球目、渾身のストレートは157キロだったが、右中間に運ばれ、二塁打となっている。

 当時、伊良部、野茂英雄(近鉄)は、清原との対戦でほとんどストレートしか投げなかった。ストレートを待つ打者をストレートで打ち取る。賛否両論がありながらも、“平成の名勝負”とも言われ、ファンを魅了した。

 最初の158キロのとき、伊良部は驚いたように振り向き、表示を見た。「エッ、こんなに出たの?」が、正直な印象だったと振り返る。それで次の回、伊東勤を打席に迎えたとき、「だったら、160キロを狙おう」と思った。結果、ボールとなり、表示エラーで数字が出なかったが、「160キロは超えていた。確実です」と伊良部は言う。

 投げたとき、右ヒジがぶっ飛んだように感じ、翌日は「筋肉痛で腕がバリバリになってしまいましたよ」と笑っていた。

●伊良部秀輝(いらぶ・ひでき)
1969年5月5日生まれ。兵庫県出身。香川・尽誠学園高からドラフト1位で88年ロッテ入団。94年には最多勝、95、96年には最優秀防御率に輝く。97年ヤンキース移籍。2003年阪神に移籍し、04年限りで退団。11年7月27日ロサンゼルスで死去した。主なタイトルは最優秀防御率2回、最多勝利1回。NPB通算成績273試合登板、72勝69敗11セーブ、防御率3.55。

写真=BBM
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