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プロ野球仰天伝説

【プロ野球仰天伝説11】内角球しか打てなかった元祖代打の神様・樋笠一夫

 

長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。

川上哲治からのアドバイス


全球ストレート狙いだった樋笠


 巨人が0対3で9回裏を迎えた1956年3月25日の中日戦(後楽園)。無死満塁で打席に入ったのが、代打の樋笠一夫だった。カウント1−1からの3球目、内角高めの速球をとらえると打球はレフトスタンドへ。これが史上初の代打逆転サヨナラ満塁ホームランだった。

 記録の神様と言われたパ・リーグ記録部長・山内以九士が“つり銭なし”と冠をつけた一打だ。3点差から4点を奪い、ピタリの逆転劇だった。

 50年に広島入りし、一度退団。51年途中、巨人で球界に復帰し、“元祖代打の神様”となった樋笠だが、実は外角球と変化球がまったく打てず、悩んだ時期もあったという。

 しかし、川上哲治から「お前は内角を引っ張る強い腕力があるんだから、それを生かすことを考えたほうがいい」と言われ、吹っ切れた。

 全球ストレート狙い――。そのため相手のクセを研究し、試合前には瞑想や、目を慣らすためにブルペン捕手を務め、試合中はベンチに座らず、立ったまま相手投手を観察していたという。

「代打にやり直しはきかない。1打席、1打席、自分が主役という思いで、打席に立っています」(樋笠)

 それが樋笠の代打の心得だった。

●樋笠一夫(ひがさ・かずお)
1920年3月20日生まれ。香川県出身。高松中から陸軍士官学校、広島鉄道局、三井鉱山美唄、尽誠学園教諭を経て50年、30歳で広島入団。1年で退団し、翌51年途中巨人へ。主に代打として活躍した。57年限りで現役引退。2007年6月17日死去。通算成績548試合、315安打、54本塁打、194打点、25盗塁、打率.229。

写真=BBM
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