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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

青学大・原晋監督の優勝コメントから考えたこと

 

プロ野球、春夏の甲子園大会(写真)と、球場に足を運ぶファンは増えているかもしれないが、この数字を永続的な「野球人気」と錯覚してはいけない


 野球界の“危機”を感じた。正月恒例の第94回箱根駅伝で史上6校目の4連覇を遂げた青学大・原晋監督の優勝会見での一コマである。目標を遂げた達成感と、周囲への感謝を語る一方で、陸上界を盛り上げていきたいと、言葉に熱気が帯びてきたそのときだった。

「ライバルは早稲田、駒澤、東洋、東海ではない……サッカー界、野球界」

 原監督は陸上界における、旧態依然の流れを「改革」していきたい思いが強いという。勝者だからこそ訴える立場にあると、公の席でメッセージを発したのだった。

 気になったのは、その序列。大学駅伝の名将は、サッカーの次に野球を位置づけたのである。原監督は小学校時代、ソフトボールに熱中し、サッカーをしたこともあったという。

 今年3月で51歳となる原監督。世代的には野球よりもサッカーを見ていた時代に育ってきた気がする。コメントに深い意味はないかもしれないが、素通りはできない。「野球界、サッカー界」ではなかった事実を、重く受け止めなければ……と感じた。

 誤解してほしくないが、上から目線ということではない。日本のスポーツ界における歴史的背景を見れば「野球、サッカー」の順のほうが、一般的であると冷静に考えたのだ。

 ある資料によると、小学生が好きなスポーツはサッカー、水泳、野球の順で、中学生(男子)が活動している部活は1位からサッカー、軟式野球、バスケットボール、ソフトテニス、卓球、そして陸上競技の順となっていた。野球界は、厳しい現実に置かれている。

 少子化の昨今、野球の普及は切実な問題だ。オフシーズンにはプロ野球選手が全国各地で野球教室、学校訪問などを積極的に行っているが、今後もこうした地道な活動は欠かせない。子どもたちに、白球に興味を持つきっかけを作ることは大事である。また、継続的な取り組みとしては「底辺拡大」について、さらに球界が一枚岩となっていかないといけない。

 プロ野球、春夏の甲子園大会と、球場に足を運ぶファンは増えているかもしれないが、この数字を永続的な「野球人気」と錯覚してはならない。将来の野球界を背負う“垣根”の部分が、先細りしている事実を受け止める必要がある。野球人口が減少していけば、必然的に高い競技レベルを維持することは難しくなるからだ。

 原監督の優勝コメントは、野球界へも向けられた「改革促進」と置き換えたい。メディアとしても、野球の魅力を発信するためには何ができるのか、襟を正す新年のスタートとなった。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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