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プロ野球仰天伝説

【プロ野球仰天伝説16】退場を無視して打席に入ったミスター・タイガース、藤村富美男

 

長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。

大もめとなり放棄試合に


稀代のショーマンでもあった藤村


 巨人長嶋茂雄にも影響を与えた稀代のショーマン、阪神藤村富美男。物干し竿と呼ばれたバットを使い長打を量産し、ミスター・タイガースとも言われた傑物だ。ただ、荒っぽいグラウンドの姿とは異なり、ふだんは酒も飲めず、甘党。家族思いで寡黙な男だったとも聞く。

 1954年7月25日の大阪球場で、この藤村が前代未聞の事件を起こした。対中日戦で阪神の打者・真田重男のカウント2−2からのファウルを審判は一度、ファウルと言った後、球がダイレクトにミットに収まったとジャッジし直した。すぐ阪神・松木謙治郎監督が猛抗議。気の短い藤村は抗議に加え、何度も審判を小突いた。

 この際、審判は2人に退場を命じたというが、実際には藤村に「風呂でも入ってきたら」と遠回しに言っただけ(藤村の弁)。藤村はその後もベンチに残り、打席が回って来た際も普通にバットを持って出てきたが、認められるはずもなく、ふたたび大もめ。ファンも乱入、警察官200人以上が出動する大騒ぎとなり、放棄試合になってしまった。

 藤村は出場停止20日間の処分となり、1014試合継続中だった連続出場記録がストップしている。

藤村富美男(ふじむら・ふみお)
1916年8月14日生まれ。広島県出身。呉港中から36年にタイガース入団、秋に本塁打王に。44年と47年から3年連続打点王、49年は46本塁打で本塁打王にも輝き、MVPに。50年には当時の日本記録191安打を放ち、打率.362で首位打者。53年は本塁打王、打点王。55年途中から選手兼任で指揮も執り、57年は監督専任、翌58年に現役復帰も、同年限りで引退。74年野球殿堂入り。92年5月28日死去。主なタイトルはMVP1回、首位打者1回、本塁打王3回、打点王5回。通算成績1558試合、1694安打、224本塁打、1126打点、103盗塁、打率.300。

写真=BBM
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