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【MLB】松井秀喜氏のMLB殿堂候補リスト入りで注目される投票者の野球観念

 

MLB殿堂入りの候補になった松井氏。記者間の投票できまるが、日本での活躍も含めて考えるのか否かが論争になった。果たして投票結果は!?


 引退から5年、松井秀喜氏がMLB殿堂入り投票の対象になっている。10年以上プレーした選手の中から、選考委員が絞り込んだもので、日本人では野茂英雄に次ぐ2人目。そこに入るだけでも名誉だが、野茂が1回目で全体の5パーセント以上の票を得られずリストから消えたように、松井も同じようになると予想される。

 ロサンゼルス・タイムズ紙のマイク・ディジオバンナ記者は「殿堂のルール第5章は、投票は選手の個人記録、能力、高潔性、スポーツマンシップ、人格、チームへの貢献度に基づくべしとある。松井は 高潔性、スポーツマンシップ、人格においては最高点。メジャーで10シーズンプレーし、通算打率.282、175本塁打、760打点も立派。しかしながら殿堂入りの数字ではない。日本時代の332本塁打、889打点も足せれば確率は高くなるが、そう見る投票者はほとんどいない。2009年にワールド・シリーズMVPに選ばれたように、MLBを代表する強打者だったのは確かだが」と記していた。

 そこにニューヨーク・ポストのジョエル・シャーマン記者が「真剣に松井を殿堂の候補として検討すべき」というコラムを書いた。彼は「ベースボールライフ」という新たな観点から見るべきだという。「スポーツは国際的になっている。リトアニア出身のバスケット選手アービダス・サボニスは欧州リーグのベスト選手の一人として長年活躍、キャリアの終盤にNBAに来てそこでも素晴らしい選手だった、そして殿堂入りを果たした。松井も日本の野球史に残る最高の選手の一人で、日米通算で500本以上のホームランを打った。メジャーでは、日本時代ほどは本塁打を打たなかったが、それでも平均よりも上の打者としてチームに貢献した。彼らのような選手はその人生でどれだけその競技に関わり、貢献があったか、長いスパンで考えるべき。われわれはよりフレキシブルに選考基準を見直すべき」という主旨である。

 投票のあり方については、記者の間で、しばしば真剣な議論になる。例えば殿堂入り二塁手のジョー・モーガンが、投票者にEメールを送り、ステロイド疑惑の選手には投票しないようにと訴えた。彼は殿堂のバイスチェアマンでもあり、神聖な殿堂にふさわしくないという主張だ。筆者も11月21日にこのメールを受け取った。だがこのメールは偽善的だと記者の間で評判が良くなかった。

 薬物検査のなかった時代、ステロイドより前に、多くの選手がアンフェタミンに頼り、疲労をごまかし、気分を高揚させてプレーしていた。アンフェタミンは問題なく、ステロイドは問題ありと明白に線を引けるのか。疑惑の選手は神聖な場というが、人種差別、家庭内暴力、アルコール依存症といった問題を抱えた人物もすでに殿堂入りしている。そもそも神聖な場とは何なのか。時が経ち、野球を巡る環境も変化する。 

 シャーマン記者のフレキシブルにという提言は説得力を持つ。今回投票は2017年12月31日だった。発表は1月24日。松井への投票は少ないだろうが、それでもシャーマン記者のように考える記者は何人いるか? 気になる。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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