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プロ野球仰天伝説

【プロ野球仰天伝説29】吉田義男はメシを食うときもずっとグラブをつけていた

 

長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。

史上最高の遊撃守備


堅守を誇った吉田


 牛若丸と言われ、史上最高の遊撃守備を誇った阪神吉田義男。アマ時代から抜群のうまさを誇ったが、天性だけではなく、努力の人でもあった。心掛けたのは、できるだけボールを所持する時間を短くすること。つまり捕ってすぐ投げるということだ。

 その技術と感覚を磨くため、ふだんからグラブをつけ、ボールを扱い続けた。練習の合間にフェンスやトタン板にぶつけ、寮では壁にぶつけ、隣の部屋の先輩から「うるさい」とずいぶん怒られたこともある。松木謙治郎監督には「吉田はメシを食っているときも、グラブとボールを離さん」と言われたが、吉田は「さすがにそれでは食べられませんわ」と笑っていた。

 感覚的にはグラブに入った瞬間に右手で握る。まだ球が動いているから、よく突き指もした。

 吉田をカナメとして阪神の内野陣は、1球1球、投手の投げるコースに合わせてポジショニングを取り、鉄壁を誇った。そのため、村山実のようにひらめきでサインと違うコースに投げる投手とはずいぶん衝突もした。

 一塁手の遠井吾郎は吉田の送球があまりに速く(タイミングも球速も)、何度も捕り損ない、「もっとゆっくり投げてください」と頼んだこともあったらしい。

吉田義男(よしだ・よしお)
1933年7月26日生まれ。京都府出身。山城高から立命大へ進むも1年で中退し、53年に阪神入団。しぶとい打撃と華麗な守備で1年目から正遊撃手の座を確保し、“牛若丸”とも呼ばれた。54年と56年に盗塁王、55年にはリーグ最多安打も記録。69年限りで現役引退。2度目の阪神監督となった85年にはチームを21年ぶりのリーグ優勝、初の日本一へ導いた。92年野球殿堂入り。主なタイトルは盗塁王2回。通算成績2007試合、1864安打、66本塁打、434打点、350盗塁、打率.267。

写真=BBM
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