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【MLB】ダルビッシュも未契約。大物FA選手の契約が進まない理由とは?

 

今オフFA市場の目玉の一人であるダルビッシュの移籍先が決まらず、先発投手たちの市場が動かない状態にある。さまざまな理由が重なっており決定は長引きそうだ


 昨年11月13日フロリダのGM会議での夜、ダルビッシュ有のジョエル・ウルフ代理人は「(契約合意まで)1〜2カ月かかるかもしれないし、2週間で決まるかもしれない。それがフリーエージェント」と話していた。カージナルスのGMと食事をしたあと、ツインズのGMとバーで飲み、情報収集に余念がなかった。

 12月13日、同じくフロリダでのウインターミーティングが閉幕に近づき、「リリーフ投手市場が活発に動いたが、これから先発市場が動き出す」と予測していた。彼の顧客でリリーバーのブランダン・モローがカブスと2年2100万ドルで合意したところだった。

 しかしながら現地時間1月9日になっても、ダルビッシュはじめFA市場の大物の契約が決まらない。この時点で約200人のFA選手が市場に残っている。選手本人も家族も不安で仕方がないだろう。

 実は近年マーケットの動きは遅くなる一方で、高名な野球記者ピーター・ギャモンズは「以前の1月が12月、2月が1月になった」と指摘している。2年前は2月に契約した選手が初めて50人を超え、昨年は65人になった。今年はその数字を大幅に上回るのだろう。

 なぜすぐに決まらないのか? ウルフ代理人は11月の時点で「ユウさんとは毎日、電話かテキストで話している。球団選びで何を優先したいのか意見も聞いている。内容は言えないが、一つだけ明かせば勝てるチームであること」と言っていた。

 ワールド・シリーズ第7戦の後、本人が会見で「またドジャースで投げたい」と吐露したのは記憶に新しい。しかしながらドジャースは、ぜいたく税を回避すべく、給料総額を1億9700万ドル以下に抑えたい。現段階なら1億8800万ドル前後に落ち着く見込み。アメリカメディアが想定するダルビッシュの金額は6年1億6000万ドル(年平均2667万ドル)で、その値段を払って、ぜいたく税も回避するのはほぼ不可能。であれば日本人的にはダルビッシュが「男気」で格安の1年契約で残留すればと思うかもしれない。しかしながら、このオフのFA市場で一番の目玉商品と目されているだけに、それは身勝手というものなのだ。

 選手は選手会の指導の下、団結し40年以上にわたって着々とサラリーを上げてきた。市場価値よりはるかに低い額や年数を受け入れてしまうと、今後の他選手の交渉に悪影響を及ぼすのだ。トミー・ジョン手術を受けた投手では、2015年11月にジョーダン・ジマーマンが5年1億1000万ドル、16年10月にスティーブン・ストラスバーグが7年1億7500万ドルの大型契約を勝ち取りスポーツ医療の大成果と称えられた。この流れにもダルビッシュは沿わねばならない。

 最近では薬物検査が厳しくなった分、30代の選手に長期契約はリスクが高いと指摘する声が上がっている。30代で4年以上の契約を得た件数は13年オフが11件、15年オフは9件だが、このオフは今のところゼロだ。ぜいたく税のルール改正で、ヤンキースやドジャースの財布の紐(ひも)が固くなっているのも逆風なのだ。

 31歳のダルビッシュを担当するウルフ代理人、31歳のジェイク・アリエッタのスコット・ボラス代理人など、みんなで粘らねばならない。ウルフ代理人が「2カ月かも」と言ったとき、言葉のあやだと思ったが、そうではなかった。
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