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プロ野球仰天伝説

【プロ野球仰天伝説33】130キロの速球で世界の王を詰まらせた安田猛の投球術

 

長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。

「僕は真っ向勝負の本格派」


緩急を生かした投球がさえた安田


 球は決して速くない。最速で135キロ程度だろうか。制球力もよく、球種も多彩で、一般的には技巧派と言われるタイプかもしれない。しかし、安田猛は「僕は真っ向勝負の本格派」と、きっぱり言い切る。そして、あの王貞治巨人)も安田に対し、「僕が内角で詰まらされた、数少ない投手の一人です」と称賛している。

 ヤクルトへは6位入団とさほど期待されたわけではない。だが、入団から2年連続最優秀防御率に輝き、2年目には81イニング連続無四球の日本記録も作った。投球パターンは内角がメーン。左打者であればシュート、右打者ならスライダーをテンポよく投げ込んだ。さらに、それを生かすのが緩急だ。60キロ前後の球を速球と同じフォームで投げ分けることができたという。

 また、王対策にはクイックにしたり、間を空けて投げたり、足も上げたり、上げなかったりと、1球1球すべて変えて投げた。1977年、王の世界記録挑戦時、四球で逃げる投手がほとんどのなかで、徹底して勝負を挑み、抑え込んだことも印象深い。

「ただ、757本目が僕から、しかもサヨナラ。(世界記録の)756本目のほうが、みんな覚えていてくれたかな」

安田猛(やすだ・たけし)
1947年4月25日生まれ。福岡県出身。小倉高から早大を経て大昭和製紙に進み、70年都市対抗で優勝して橋戸賞を獲得。72年ヤクルトへ入団すると、ドラフト6位での入団ながら1年目から最優秀防御率の活躍で、新人王にも輝いた。翌73年も2年連続最優秀防御率。日本記録となる81イニング連続無四球もマークしている。81年限りで現役引退。主なタイトルは新人王、最優秀防御率2回。通算成績358試合登板、93勝80敗17セーブ、防御率3.26。

写真=BBM
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