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プロ野球仰天伝説

【プロ野球仰天伝説34】一本足打法と宮本武蔵の技を合体させた木俣達彦の“マサカリ打法”

 

長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。

2種類あった“マサカリ打法”


木俣の“変則マサカリ打法”


 マサカリ打法と言われた中日の捕手・木俣達彦のバッティング。実は、それは2種類あった。まず、いわゆる“基本マサカリ打法”だが、これはずっとあこがれていた巨人王貞治の連続写真を裏焼きし(木俣は右打ち、王は左打ち)研究したものだ。

 高いグリップから打ち下ろすスイングと、失礼ながら木俣の金太郎似(マサカリ担いだ♪)の風貌からマサカリ打法の名前がついた。ただ長打力はアップしたが、外に逃げる変化球にタイミングが合わない欠点があった。

 1973年には打撃不振に苦しみ、毎晩のように200スイング程度を繰り返し、フォームも研究した。そのなかで「疲れてハーッと息を吐いたとき、偶然グリップが下がったらしっくりきた」と振り返る。

 さらに剣豪・宮本武蔵の本にも書いてあった呼吸法を参考に試しているうちに、息を吸って構え、2度、短く吐いて振るとスムーズにバットが出ることが分かった。これがいわば“変則マサカリ打法”(写真)で、長打力は落ちたが、広角に弾き返せるようになる。

 74年には王と首位打者争いもし、初の3割をマークした(.322)。つまり「王さんの一本足と宮本武蔵の呼吸法の合作が、僕の打法になったんです」(木俣)。

木俣達彦(きまた・たつひこ)
1944年7月7日生まれ。愛知県出身。中京商高から進んだ中京大を中退して64年に中日へ。2年目の65年に正捕手の座をつかむと、強打の捕手としてチームに貢献し続けた。ベストナイン5回。アイデアマンでサプリに詳しく、医学博士の異名も取った。82年限りで現役引退。通算成績2142試合、1876安打、285本塁打、872打点、20盗塁、打率.277。

写真=BBM
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