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プロ野球仰天伝説

【プロ野球仰天伝説48】引退後も握りを見せなかった西本聖のシュート

 

長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。

パの三冠王へすべてシュート


負けん気も強かった西本


 1987年の開幕戦。対中日戦で巨人西本聖が、とんでもない勝負をやっている。相手はロッテから移籍した前年の三冠王・落合博満だ。4打席の対戦で、投げた球種はシュートのみ。4打数1安打に抑え、試合も6対0で完封勝利を飾った。

「意地です。パでは打ったかもしれんが、セでは違うぞって」

 西本らしい負けん気だった。

 西本がシュートを磨いたのは、もともとストレートがナチュラルに変化し、効果があったこともあるが、球があまり速くないと自覚していたからでもある。

「僕の球で三振を狙ったら痛い目に遭うだけです。右打者なら体に近い内角をシュートで攻めれば自打球も多くなるし、必ず恐怖感が出てきますからね」

 シュートを持っていると、ゴロにしやすいので、相手が一塁に出ても怖くないという。1球で併殺にできるからだ。事実、81年の日本シリーズでは、対日本ハム戦で被安打13の完封勝利もあった。

 94年限りで引退。その後、99年インタビューしたことがあったが、シュートの握りの写真をお願いすると、「これは自分の財産ですから」ときっぱり断られた。目は現役時代と同じく、ギラギラしていた。

西本聖(にしもと・たかし)
1956年6月27日生まれ。愛媛県出身。松山商高からドラフト外で75年に巨人へ。81年には沢村賞、日本シリーズでは2完投でMVPに。89年に中日へ移籍して自己最多の20勝で最多勝。93年にオリックスへ移籍、翌94年にはテストを受けて巨人へ復帰も一軍登板なく、同年限りで現役引退。主なタイトルは最多勝利1回、沢村賞1回。通算成績504試合登板、165勝128敗17セーブ、防御率3.20。

写真=BBM
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